第50話 事前準備、再び

色々な方の善意に支えられている事に感謝している俺、クルトンです。


ならば幾らでも甘えさせて頂きましょう。

そして稼ぎで報いましょう。


ポックリさんに革や木材、綿や布、鉄にニッケル、クロムの手配を行い代金を前払いする、大金貨1枚。


「本当にこれで良いのか?金糸とか銀糸も揃えられるけど」

との申し出もありましたが式典用の衣装ではないので遠慮しました。

機能優先で今回は拵えますので大丈夫です。


明後日の昼以降には取りに来て良いと言われたので、ではそれに合わせてまた来ますと告げる。


ついでにと各工房の紹介をお願いする。

「馬具の工房だよな、って言っても革の職人が大体まとめてるからそこだろうな」

場所を教えてももらいすぐに移動。





やってきました革専門店、プリセイラ皮革工房。

同じ名前で直営販売店もあるそうな。

結構有名らしい。


入口から店番している人にポックリさんからの紹介状を渡すと、「少々お待ちください」とそれを持って行って年配の女性が奥から出てきた。


「クルトン様ですね、初めまして工房長のセイラです」

初めまして、ポクリートさんの紹介できましたクルトンです。


「早速ですがなんでもスレイプニルの馬具を自作したいとか」

はい、場所と設備、道具を貸して頂きたくてですね。


こう言っちゃなんだが職人の工房にこういったお願いするのは結構無茶なことだって事は自覚している。


しかし意外にも二つ返事で了解を貰う。

不思議に思っているとセイラさんはにっこり笑って

「スレイプニルの馬具がこの工房から作り出されるんです。名誉な事ですよ」

ただし、あなたの腕が基準に満たない時は馬具を世に出せませんと釘を刺された。


まあ、俺も作るの初めてですから納得するまでやるつもりです。


「初めてなのですか?!ポックリの紹介状には全く問題ないとありましたが」

ええ、問題ないですよ(汗)と、自信満々に答えたもののポックリさん話盛って無いよな?って心配になった。



このセイラさんもスレイプニルが見たいという事で店先にいるのを紹介する。

むやみに近づかない様にとも伝えて。


「素晴らしいですね、この馬躰と良い、このビロードの様な漆黒の艶と良い、蹄など黒曜石の様です」

「ホウ」と見惚れている様子。


正直馬の健康状態は良く分かるけど格と言うか外観の優劣は良く分からない。

健康で良い馬躰である事は間違いないので「そうでしょう、そうでしょう」と相槌を打ってる俺。


ちなみにスレイプニルに蹄鉄は打たない。

そもそも蹄が頑丈という事もあるのだが8本の脚それぞれから発せられる脚力に蹄鉄が耐えられないからだそうな。

全速力で疾走すると蹄鉄とそれを止める釘が鳳仙花の種のように弾け飛ぶらしい。

指向性地雷かよ。



それから明後日材料がそろう予定なので3日後の朝にまた来ますと言って店を出る。


あとやり残した事は無いだろうか・・・兵舎によって魔物素材の引き取りあったな。



やってきました城門近くの兵舎。

スージミ大隊長を呼び出してもらいます。


「おう、フンボルト将軍をぶん投げたそうじゃないか、俺も見たかったよ。もう一回やってほしいんだが」

いやいやいや勘弁してください。



そんなことより魔獣の素材どうでしょう。

「ちょっと待っててから、持って来させる」


そう言うとお付きの人が伝令に走る。

そして台車に乗ってる素材を持ってきた。


「確認して問題なければ書類にサイン頼むな」

はい、・・・問題ないです、サインをしてと。

ありがとうございました。


ここでもスレイプニルを見せろと言われ入り口まで移動。


「おおおおお、でっけえ!いいなー、いいなー」

髭もじゃなのにまるで子供の様です。


「ところで名前はなんて言うんだ?」

名前とは?


「このスレイプニルの事だよ、なんなら俺が付けてやろうか?」

やめてください。

でも今まで考えもしなかったな。

どうしようか。


一旦保留だな。

それはともかく素材の他にお願いも有って伺ったのですが。


「何?」

厩舎の有る宿は超高級宿なのでこの兵舎に宿泊させてもらえませんでしょうか。

1週間くらい。


「うーん、ダメじゃないが空いてる部屋って言ったら独房しかないと思うんだよな」

自前で寝具持ち込めればそこでも良いですよ。


「・・・厩舎でスレイプニル眺めてても良いか?」

構いませんが下手に近づくと体当たりされますから注意してくださいね。


「おう、じゃあ決まりだな、おい、独房に案内してやれ」

そうお付きの人に指示します。


言い方ぁ。


独房は地下にあるって事も無く、ちゃんと明るくて良い感じ。

俺のガタイだとなんかカプセルホテルみたいな感じになるけども。



その後ポックリさんの準備整うまで王城、宝飾ギルド、プリセイラ皮革工房で打ち合わせ、スレイプニルの運動も兼ねた王都外での狩猟などやれることをこなしていく。


そしてポックリさんの商会で。

「コレが頼まれていたもんだ」


品物を確認し背負子とスレイプニルに括り付ける。

「有難う御座います」

と挨拶をした後、プリセイラ皮革工房にお邪魔して早速馬具の制作を行う。

もう、サクサク行きますよ。

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