第49話 コルネンに向けて

ようやく光が見えてきたようで心穏やかな俺、クルトンです。


シズネル本部長と改めて打ち合わせ行っています。

「じゃあコルネンに一旦戻るんだね?」


ええ、遠回りして途中の鉱山寄ってからですけどスレイプニルがいるのでかなり楽ちんになるでしょうから。


「一応君から教えてもらった鉱石の特徴は各地の鉱山に鍛冶ギルドの協力で通達してもらうよ。怪しい奴は片っ端からサンプルをカサンドラ工房に送ってもらうから」

大変助かります、宜しくお願いします。


「これくらいはさせてくれ。それと姫様への品物製作するにしてもそればっかりって訳じゃないんだろう?」

まぁ、そうでしょうね、その他の作品も合間見て作っていきます。


「カサンドラ工房にもこの前手紙出したけど、国王陛下との謁見後カンダル侯爵様からクルトン君の作品の流通許可が出たから頑張ってよね」

ええ、妹の結婚資金稼ぐためですから手は抜きません。


「?そんなに持参金必要なの、クルトン君の実家ってもしかして豪農」

いえ違いますけど。


「国王陛下からの依頼1件で事足りてるんじゃないの」

そうかもしれませんが、あれは必要経費を前借した様なもんですから利益にはできません。

スレイプニルの税金も払わないといけませんし。


「そうか、まあ期待しているよ、頑張ってね」

では、また近いうちに伺うかもしれませんのでその時は宜しくお願い致します。


宝飾ギルドを後にしてまた旅の準備です。

移動距離は往路より長くなりますので十分な準備を整えます。

銀行に寄って後は調味料の買い出しに行こう。



はい、銀行の窓口に来ました・・・が、スレイプニルが目立ちすぎて入り口に人だかりができてます。

今はどうしようもないので諦めます。


ここでの用事は口座の開設。

受付に言って要件を伝えサクサク終了しました。

懐から持ち金出したときはギョッとしてましたけどもね。



次に商業ギルドにお邪魔します。

「先日こちらに到着したコルネンからの商隊長ポックリさんいますか?」

商隊先頭馬車の御者も兼任していた商隊長さんを呼んでもらいます。

本名はポクリートさんなのだけど皆「ポックリさん」と呼んでたのでそのまま伝えたらちゃんと通じました。


受付の人が確認したところ今日は来ていないので自分の商会にいるのではないかとの事。

場所を教えてもらいそちらに移動。


卸売専門なのか『店』と言うよりも倉庫の様な建屋で、扉を開け入口から声を掛けます。

「コルネンのクルトンです。ポックリさんいますか~」


奥から「おーう」と声がしてポックリさんがやってきました。

「よう、なんかすごい事なってるみたいじゃないか。王都に突撃してきたスレイプニルってクルトンが連れてきたんだろ?」

ああ、そうです俺です。


「かーっ、羨ましいったらありゃしない!で、どこだいスレイプニル?」

入口にいます、見ますか?


当たり前だ!と言うが早いか入口を飛び出します。


「うお!2、いや仔馬がいるじゃねえか、3頭か。しかし・・・いい艶だなぁ・・・」

うっとりしてポックリさんが無防備に近づいていきますが、慌てて俺が襟首掴んで引き寄せます。

「グェ!」っと声を出したポックリさん。

仔馬がいるので警戒心がハンパないんです。牡馬が構えているでしょう。


何もしなければ大人しいけど手綱もまだ着けてないから繋げないし・・・それでも俺から離れようとしないからそのままだが・・・牡馬がその気になれば近づく者には威嚇、体当たりしていく。


「おお、スマン助かった。しかし見事なもんだなぁ」

まだうっとりして眺めています。

この世界の人達にとって馬はステータスの一つなので前世で言う高級スポーツカーの様な感覚なのかもしれません。

その他にも遠巻きに眺めている人結構いますし。


いつまでも眺めていそうだったので急かして建屋の中に戻り、早速要件伝えて品物の在庫が有るか確認していきます。

まずは調味料、塩や胡椒その他の香草関連。

これは在庫が潤沢にある様で、俺一人分に対し十分な量をこの場で買う事が出来ました。


次は馬具。

今は俺が裸のままの牡馬の背に乗っていますが高速で移動したり細かい指示を出す為には必須の道具です。

ある意味人類の英知の結晶ですので、馬具。


「さすがにこれは扱ってないな。通常の馬なら当てあるんだがスレイプニルだろう?」

うーん、と腕を組んで考え出します。


・・・作りましょうか、材料必要ですけど。


「ん、どこに作らせるんだ?そんな伝手あんのか」

いや、俺が作ろうかと。


「冗談言うな、護衛のお前が作れりゃ職人必要なくなるってなもんだ」

いや、俺本職は宝飾職人って言いましたよね。


「本当だったのか・・・。でも、それでも宝飾職人が馬具職人の真似事はできんだろう」

多分大丈夫です、革、金属、木工の技術も習得していますし鞍や鐙、轡や手綱も作り方は頭に入ってます。

作った事ないけど。


「相変わらず驚かせる奴だな。荷物積んだ馬車持ち上げた時も腰抜かしたもんだが」

材料だけはお願いしたいんですけど大丈夫ですか?


「はっ、任せとけ。スレイプニル用だろ?店の恥にならんように最高級品を準備してやる、期待してろ」

有難う御座います。


最近皆に感謝してばかりだな、俺。

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