第45話 段取り
その日は王城からそのまま宿に戻りました。
翌日、宝飾ギルド本部長と詰めの話をしている俺、クルトンです。
昨日の国王陛下との謁見内容をシズネル本部長と精査、これからの方針を話し合います。
「チェルナー姫様の成人祝いの品か、大変名誉なことだね。宝飾ギルドもその事業に全面的に協力しよう」
有難う御座います。それでお願いなのですがこの材料を揃えてほしいのです。
メモ用に準備した木板に必要な材料を記載し渡します。
「・・・良く分からないものが有るね、スズ、ニッケル、は良いとしてボーキサイト、チタンって何かな?金属なんだろうけど」
そうです金属です。詳細は長くなるので省きますが強度を確保する為に使いたいので。
「君が特許を取ったステンレス鋼じゃダメなのかい?それこそ指輪かネックレス、ああ、ティアラでも作るんじゃないの」
話せば長くなるので割愛しますが、そのどれでもないものを造りますので。
手に入らないのであれば諦めますが、最善を尽くしたいので準備だけでもしておきたいんです。
「分かった、その辺の事情は聞かないでおこう。でも・・・鍛冶ギルドにも協力は要請するがこのボーキサイトとか・・・見分けられる人いるのかね?」
俺が判別します。
とりあえず片っ端から鉱山を回ろうかと思います。
「無理だね・・・場合によっては国中を回ることになる。年単位でかかる仕事だよ、鉱山間の移動だけでもバカにならない。しかも今の話じゃ新素材を探すって事だろう?」
・・・鉱山の場所、王都からの地図とそこまで馬車でどの位掛かるか日数を調べてください。お願いします。
無理は承知しています。
「協力はする、そう言ったからね。でもちゃんと説明してくれ、やり切れる公算はあるから言っているんだろう?」
その回答は7日、いや6日時間をください。
確認したい事が有るので、それが分かり次第ちゃんと説明します。
「・・・わかった。では7日後にもう一度ギルドに来てくれ。そこでこの事業の話しを仕切り直そう」
無理を言って申し訳ありません。
「いいさ、魔獣殺しの英雄殿の頼みだ」
ニヤリと本部長の口角が上がりました。
よくご存じで。
そこからギルドを出てそのまま王城へ向かいアスキアさんを呼び出してもらう。
褒美でもらった王城への無条件入城許可証が早速役に立った、一番使わないもんだと思ってたのに。
一番魔獣の目撃情報、討伐箇所の多い場所はどこか教えてもらう、王都から近めの所で。
そして、そこに向かうと告げる。
「ミスリルが必要なのですか。いくらかなら融通しますよ」
いえ、それもありますが段取りで必要なものを揃える為に探さなければならないものが有るので。
「無理はしないでください」
ええ、大丈夫ですよと一言伝えそのまま王都を出発した。
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教えてもらった場所は馬車で1週間かかるが、俺の脚で2日半程で着いた。
そこは遠くからでも緑が濃く見える、むしろ黒い森だった。
そのまま黒の森と呼ばれている場所。
ここに来るまでこの身体でもちょっと無理した自覚はあるので翌朝まで体を休める為にテントを張ると、野豚のハムをかじりながらその日は眠りについた。
翌朝、昨晩と同じハムと持ってきたパンで食事を済ませ森の中に分け入る。
勿論認識阻害全開で可能な限り奥まで最短距離で掛けていく。
そうして2日間森の中を駆け回ったところでお目当ての物を見つけた。
いた・・・戦闘能力で言えば魔獣どころか騎士にもとどかないがその存在感は魔獣に勝るとも劣らない。
8本脚の野生馬、スレイプニル。
しかも番だろうか2頭、小川で水を飲んでいる。
何故か魔獣の生息域に近い場所にいる超巨大馬で通常の馬と同じく草食。
気性が荒いわけではないが警戒心がかなり強く性格はかなり頑固。
生息数はそれなりにいるのに前述した理由で見つけるのも手懐けるのも、そして捕まえるのも非常に難しい野生動物である。
その巨体にたがわず走る速度は矢の様で、森の不安定な地面や障害物である密集した木々が有っても軽快に走り抜ける為、魔獣でも追いつく事ができない。
その背に乗る事を許された者は、それだけで騎士爵を叙爵されるという法律が有るほど騎乗動物として超優秀な生物。
鉱山間の移動の為にこのスレイプニルを手に入れたかった。
聞いた話では間違いなく俺が走るより早いし、何より俺を乗せて地を駆ける事ができる騎乗動物はスレイプニルしか無いだろう。
・・・ドラゴンもいたりするらしいが、そいつは例外中の例外。
スレイプニルとの比較は無意味だろう、まず見つけられないらしいし。
小川に近づくと俺に懐いてくれます様にと、まずは誠意をみせる為に認識阻害を解いて2頭の前に姿を現した。
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