第43話 仕様を決めよう

何はともあれ報酬を頂ける最初の仕事が王族からの、今回はそのトップである国王陛下からの依頼という事で俺のネームバリューストップ高!

と、浮かれている俺、クルトンです。



この仕事、前のめりに受けさせていただきます・・・が、具体的にどんなのがよろしいでしょうか?


強めの効果を求めれば我々よりも脆弱な肉体を持つ先祖返りの姫様にはそもそも耐えられません。

効果を慎重に調整する必要が有るでしょう。


「まともなこと言いよる。ちょっと安心した」

陛下、俺は仕事に物凄く誠実ですよ。

出来るものと出来ないものが有りますけど、まずは案を条件なしに出していきましょう。



そして色々な意見が出る。

単純に筋肉の強化

骨格の強化

血行促進

安眠促進

食欲増進

日焼け止め

体内に取り込んでしまう有害物質の無害化

循環系、呼吸器官系、消化器系の強化

細胞組織の修復機能の強化

・・・等々


色々出ましたが、これに優先順位をつけていきましょう。

多ければ多いほど魔法陣を刻むスペースが必要になりますので宝飾品の大きさに収まるかの問題も出てきます。

姫様ですからティアラ位なら問題ないかもしれませんが寝ているときにも効果を持続したければ指輪などの小さくて邪魔にならないものの方がいいでしょう。

性能優先で考えるのであればプラチナを繊維状にしてその一本一本に魔法陣を刻み、その糸を使って布にしてドレスに仕立てるという手も有るでしょうが、そこまでするとおそらく俺でも年単位の仕事になるでしょう。


国家予算レベルの費用かかりそうです。

そうなれば費用対効果から見て国土の灌漑設備の予算にした方が有効かもしれません。


生命維持に関わる機能を指輪に持たせ、その他の強化系はネックレスやティアラ、腕輪などに機能を分散させるという手もあります。



どうします?


「「「うーん」」」

陛下、宰相さん、アスキアさんが三人とも腕を組んでうなります。


「できれば一つにしたい、一つに思いを込めたい」と陛下。

「しかし数点に分けて機能を分散させるのは有効な手ではないでしょうか?下世話な話ですが全部合わせた金額は相当なものでしょうが1個当たりの値段はそうでもないでしょう。より微細な細工を施さなくてもよくなるおかげで一つの術式当たりの単価が下がる様ですし。」

「姫様が陽の下をなんの憂い無く歩けるのであれば・・・」


3人それぞれの思いも伝わってきます・・・もうちょっとかかりそうですね。







3人を残して俺は部屋から出て庭を散歩している。

そう、部屋に残っているのは3人、メイドさんを除いて。

つまり・・・


「のうのう、一つ手合わせしてみんか?体を動かせばもっといい案も出るだろうて」

将軍様が・・・名前はフンボルトさんだそうです・・・俺にウザがらみしてきます。

名前を聞いて前世の飛べない海鳥を思い浮かべたので俺はペンちゃんと呼んでます、心の中で。



でも、ペンちゃんの言い分も分かる。

ちょっと運動しましょうか。


「おおう!そうでなくては、早速準備しよう!

誰か、誰か!修練場の準備をしておけ、インビジブルウルフの爪が振るわれるぞ!」


いや、そんな爪無いからね、俺。

しかし声でっけえな、耳キーンてなったんですけど。





修練場の真ん中でペンちゃんことフンボルト将軍と俺が対峙している。

壁際には騎士団の団員さん達が控えており、話し声も無いのに圧が音を発している様でちょっと緊張する。



ペンちゃんは背中の大剣を団員へ預け練習用の木剣を肩に担いている・・・が、それはペンちゃん用に設えてあって重さは鉄の大剣とほぼ同じとの事。

俺を殺す気ですか?


「で、武器は何を使う。デデリを拳で沈めたとは聞いているがさすがにワシは油断せんぞ?」


・・・人間相手に武器は使いません、加減できませんので。


「ほう、言いよる。しかし嫌いではない、・・・早速始めようか」


こうして審判をかって出た団員から試合の開始が告げられる。


分かってくれとは言わないが、こっちの身にもなってほしいとも思う。

こちらの世界の戦闘術は対魔獣特化型だ、対人戦では身体能力ゴリ押しで技と言うには稚拙すぎる。


一発で決めるつもりはない、あの部屋で3人の結論が出るまでの時間付き合ってもらおう。

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