第41話 狂う段取り
色々理解が追いつかない俺、クルトンです。
その、インビジブルウルフとは何ぞや
「デデリがよこした手紙に書いてあったぞ、其方の動き、目で追えない程だったとか。まるで姿が消えた様だったそうではないか。それに白狼の加護も有る様だと。インビジブルウルフ(見えない狼)ぴったりじゃろ?」
因みにデデリの手紙に書いてあったのをパクったとケラケラ笑ってる。
『いいえ』とは言えない俺。
何気に権力には弱いのよ、厄介だから波風立てずに、空気の様に。
有難う御座いますぅぅ。
これにて謁見は終了。
アスキアさんの案内で待機部屋に戻る。
待機部屋なのに広くね?
謁見の間の4分の1位の広さ?だけど一人に充てがわれるにしては広く感じる。
・・・俺とアスキアさんの他にメイドさんが6人もいる。
メイドさん多くね?
色々不思議に思っていたがすぐに合点がいく。
ドアが開き国王陛下の登場だ。
一緒に宰相とスキンヘッド髭モジャもお供している。
うん、索敵でちょっと前から分かってた。
「いやースマンスマン、あんな近くに魔獣が出ちゃったから形だけでも筋を通さないと収まらんのよね」
フランクだな国王陛下。
魔獣と言う太古から存在する脅威を隠す事はこの世界の倫理的にご法度、しかし今回は騎士団が魔獣を確認する前に排除されているので魔獣が討伐されたことへの説得力を持たせる為、王都民を安心させる為のエビデンス作りって事みたい。
謁見時の会話や様子は全て記録するそうだから。
「ホントは君の宝飾技術の件で色々聞きたかったんだけど準備の最中に魔獣出現、スピード討伐って事でしょ?どうしてもこっち優先しなくちゃいけないからね」
ごもっともで。
「だからといって魔法の付与技術の件をうやむやにも出来ないからここに来てもらったって訳さ」
この発言は宰相さんです、陛下とノリがそっくり。
「デデリを倒した腕前見せて頂きたい。これが終わったら修練場で手合わせ願えないだろうか」
これはスキンヘッド髭モジャもとい将軍様の発言。
話の脈絡をぶった切るデデリさんと同類の匂いがする。
とりあえずここで片付く方から済ませてください、お願いします。
「では、早速宝飾関連の方から。先日カサンドラ第二夫人のシャーレが持ってきた指輪を見たが素晴らしい出来だ」
国王陛下のお言葉。
有難き幸せ・・・これで合ってる?アスキアさん。
にっこり笑うだけで何も言わないアスキアさん、ねぇどうなの?
「そんなに畏まらなくても構わんよ。公式の場ではないし王都民なんぞ陛下がお忍びで城下に出たときはもっとぞんざいに扱うぞ?」
宰相さん、そう言われましても慣れてないもんでねぇ。
陛下が話を進めます。
「それでのう、儂の曾孫にも造ってほしいんじゃよ、指輪とか腕輪とか」
それは正式に依頼を出してもらって、ちゃんと対価を頂戴できれば問題ないですが・・・それだけじゃないですよね王城に呼び出すって事は。
「うん、うん察しが良くて助かる、しかし聞いていたよりずっと聡明だのう、とぼけている様で話が脱線しない。それでいてそちらが望む結果に誘導されているようだ・・・老婆心で申すのだが周りに誤解させんように持っている力はもっと示した方が良いぞ?マジで勘違いする輩が湧いてくるからのう」
・・・やっぱり経験の差かね、前世含めて80年位の知識はあるが為政者の経験にはかなわんな。
陛下の話を引き継ぎ宰相さんが口を開きます。
「陛下、話を進めませんと・・・でだ、陛下の曾孫であらせられるチェルナー姫様への成人の祝いの品として贈りたいのだ。これは公然の秘密だが姫様は先祖返りでな、その類に漏れず病弱なのだよ」
ああ、そうか、それで俺を呼び出したのか。
俺の指輪、いや付与魔法の力で姫様の身体能力をこの世界の標準まで底上げしたいって事だな。
うん、俺理解した。
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