第40話 (大人の)事情

キツネにつままれた感が否めない俺、クルトンです。

なんか俺は今、王城に帰還したことになってしまいました。

今回初王都なのに。



「よくぞ無事に戻った、大儀である」


え、王様何言ってるの


チラリとアスキアさんを見ると瞬きもせずに「合せて」とのアイコンタクト。

え、ええええ・・・・アドリブ超苦手なんですけど。


もったいなきお言葉


とか言っちゃった俺、前世も含めてこんな言葉初めて使ったよう。

俺の意思とは関係なくどんどん話が進みます。


王様がいる位置からは下だが、少なくとも剣は届く位置に控えている大剣しょったスキンヘッドの髭モジャが、俺の成果を発見から討伐までバカでかい声で朗々と語ります。


俺が大隊長さんに報告した内容だ。間違っちゃいないがかなり話しを盛ってる、こっぱずかしい。

「いや、そこ大げさ」って声に出しそうになる俺を、アスキアさんが「堪えて!」と幾度もその青い目で伝えてきます。



国王陛下もスキンヘッドの髭モジャの話しに合わせわざとらしく「ほう!」とか「それは誠であるか?」とか合いの手入れてる。

なにこの茶番。


その後国王陛下から直々に「よくぞ一人で立ち向かってくれた」とか、「魔獣を弓で討伐したとか?」なんて問答が有り無難にこなす。


そして髭モジャスキンヘッドの反対側に控えていた文官風の男性が

「これは褒美を取らすべきでしょう」と進言。


陛下も「さもありなん」と鷹揚にうなずく。



文官風の男性・・・えっあのおっちゃん宰相様ですか、国王陛下の弟君、そうですか。

その宰相様が手をかざすと控えていたこれまた文官風の男が盆に何か持ってきて中の羊皮紙でしょうか、渡しました。

・・・目録でしょうね。


「強顎型魔獣、1頭を単独討伐。この功績により以下の褒美を授ける。一つ・・・・・」


内容が読み上げられます。


一つ、大金貨50枚

これは単純にうれしい、超うれしい。これだけで妹たちの結婚資金の目標金額に到達。

これ以外に魔獣の買取金有るから、もう村に戻って良いんじゃね、俺。


一つ、王都を含む国内移動の際に発生する交通費の免除、国が費用を代替わりする。その証となるる割符の永久貸出し。

人によっては垂涎の一品なんだろうが俺には必要ないかもね。馬車より早いから。

いや、国内でも船で行く方が時間短縮なる地域あるみたいだから後々役に立つかも。


一つ、王城への無条件入場の許可、その許可証となる割符の永久貸出し。

これは良く分からん、ことある毎に呼び出してこき使ってやるって事か?

でもいつもはコルネンにいるし、2年後は故郷に戻るから無視でいいな。


一つ、王都内での事業立ち上げに限り設立費用の補助金無条件給付許可証(最大で費用の8割を補助金で負担可能)

これもちょっと微妙。

金額換算したらかなりのものになるのは間違いないんだけど、俺のは村に戻るから作品の販売店舗を王都に設けるって使い道しかないか。


・・・いや、何気に有効かもな、村で作って行商のカイエンさんに運んでもらって王都の店で雇った店員に販売してもらう。

村にいながら現金収入。もらった大金貨活用すればこの褒美は俺の老後の為に活躍できそう。

しかも無条件って事は煩わしい審査とかないって事だよね。


以上4つの褒美、貴族には2つ位でその他陞爵とかあるみたいだけど平民の俺には直接役に立つ褒美が良いだろうとこれにしたみたいだ。


格別のご配慮痛み入ります、謹んで頂戴いたします。

・・・言葉使いあってるか?



そろそろ終わったかと場の空気が弛緩したところで陛下が口を開く。


「そう言えば聞いておるぞ、『二つ脚の魔獣』あのデデリを拳一つで沈めたそうではないか。わしもこの目で見たかったぞ」

陛下の声が弾んでいる。


ええ、いやそれはまあ流れと言いますか何と言いますか。

しかし二足歩行の魔獣が存在しないからついたんだろうなぁ、その二つ名。

なので二足歩行である鳥型も含め足の無い魚型の魔獣もいません。

でっかい虫型はいるそうです、キモい。


「なになに、謙遜するでない。お前がそんな事では他の者が自分の武勇を語れなくなる」

そんな酒の席はつまらん、とおっしゃいます。


「武勇を喧伝しろとは言わんがもう少し・・・そうだな、わしからも直接褒美をやろう。これからは称号として『インビジブルウルフ』を名乗るが良い、この場から其方はクルトン・インビジブルウルフだ」

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