第38話 駆け引き(脳筋)
ミスリルの虜、俺クルトンです。
誰も何も言わないもんだから初めから無いもんだとばっかり思ってましたわぁ、ミスリル。
使ってみたいわぁ、ミスリルの指輪なんて造ってみたいわぁ。
ってトリップしていたところに大隊長さんの声。
「特にミスリルになるこの骨と牙は是非とも国に買い取らせてほしい、何とかしてもらえないか」
・・・そうはいってもねぇ、ミスリルですよ、ミスリル。
今まで宝飾工房で話題にも出た事なかったって事は多分扱った事ないんですよね。
扱った事が有っても極々稀にって事ですよね。
自然に顔がにやけます。
きっと金より高額、希少なんでしょう?
「ああ、ザックリだが最低でも金の5倍以上、純度によってはさらに跳ね上がると言われている、だがこいつの真価は武器と防具に使われてこそだ。極少量でも合金への触媒として使うと刻印した魔法陣の効果が跳ね上がるんだ」
俺たち騎士団の命に係わる素材なんだと力説されます。
そう言われると目先のミスリルに固執する俺が悪者の様です。
なるほど、ではこうしましょう。
すっとテーブルに右肘を付け手のひらをワキワキとさせます。
大隊長さんも察したようです。
そう、アームレスリングで決着を付けましょう。
大隊長から「場所を移そう」との事で解体設備が設置されている部屋に移動しました。
騎士団?いや、解体と鑑識の職員さんですか、何が始まるのかと見守っています。
中央に俺の腹位の高さのテーブルが準備されます。
中型魔獣解体用のテーブルとの事なので強度は申し分ないとの事。
その上に両者肘をつきガッチリ手を組み合いました。
審判をかって出た解体職人さんが号令を掛けます。
「ready go!」
チョット!なんで号令だけネイティブなん?
笑ってしまいましたが腕はピクリともしません。
向かいの大隊長はニヤリとしています。
・・・見せ場なんてありませんよ
ゆっくり、しかし確実に腕を押し倒していきます。
大隊長への声援が一際大きくなりますが無駄です。
やがて大隊長の手がテーブルに着きました。
「あぁあぁ~~~~」との声が響き渡り大隊長がorz状態です。
でも俺も鬼ではありません、こう告げます。
「肉100kgとマントを造れるくらいの皮、そして頭蓋骨をください、あと牙も2本程。それ以外は買取でお願いします」
頭蓋骨を指定した事に解体の人が「良いとこ持ってくなwww」って言ってましたが勘弁してください。
「まあ背骨と骨盤、大腿骨は残ったから御の字だろう」って大隊長さんもホッとした様です。
「今日はここまでだがまた呼び出しに行くと思う、悪いが協力してくれ。それでこれが魔獣素材の手付金だ。」
大隊長さんが手のひらサイズのずっしりした革袋を渡してくれます。
中を見ても?
「おう、今確認してくれ、小金貨で20枚あるはずだ。間違いなければここにサイン頼む」
はいはい、確かに。
(サラサラ)これでいいですか。
「ん、問題ない。今日はここまでだ、また頼むな。あと魔獣の査定だが通常でも1か月はかかる、今回は大物だから・・・多分2か月は待ってもらう事になるだろうな、そんときにはもうコルネンにいるんだろう?後日でいいから連絡先教えてくれ。」
騎士団から金振り込むから、そん時は腰抜かすぞ、と期待を煽る大隊長さん。
そして宿泊している宿を伝える。
でもよかった、小金貨20枚(日本円で約40万円)って事は諦めていた王都観光をしてお土産も買うことも十分できるな。
革袋を胸の内側ポケットにしっかり納め、落とさない様に気を付けて宿まで戻った。
魔獣に遭遇した時はどうなるものかと思ったけど、今日はいい夢見れそうだ。
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