第35話 次々と面倒事が・・・

本部長の前でソワソワ落ち着かない俺、クルトンです。


「ん~、ダメ元で僕も同行させてもらえる様申請するか」

手紙を読んだ本部長が申しております。


どういった理由で?


「ギルド員の保護だね、ギルドは公的機関で収入の一部が国の予算から捻出されるんだ。だけど、だからと言って好き勝手口を出されたらたまったもんじゃない。ギルドは国の下部組織じゃないんだから。機会が有ればこうやって存在感を示さないと面倒な奴らが湧いてくるんだよ」

「本部長!!」サリス女史より声が飛びます。

事実この前も人事に口出ししてきただろう?と本部長が言うとサリス女史が微妙な顔して黙った。


いや、なんか段々分かってきた。

思ったより王都には面倒な輩が多いようだ。

それを表立ってとはいえ処罰、取り締まれないって事はある程度個人の信仰、思想の自由が担保されているんだろう。

良い事ではあるが厄介だな。

でもデデリさんは何かあればぶっ飛ばしていいって言ってたから(言ってない)気分的にはまだ余裕が有る。


しかし、俺ってギルド員なんですか?


「えっ?違うの」


入会した記憶はないんですが何か手続きありましたっけ?


「サリス君、そのへんどうなってる?」


「クルトン様はカサンドラ宝飾工房との専属契約と同時にギルド員の入会手続きと会費の徴収が済んでおります」


「だってさ、問題ないみたいだね」


・・・サリス女史といい、本部長といい決定的な所は分からないけど俺の情報かなり把握してる様な感じがする。

このまま信用していい物かどうか・・・。


「とりあえずこちらからクルトン君が王都に到着した旨王城に連絡しておくよ。今日の宿は決まってるの?」

いえ、まだ。さっき到着したばかりで。


「なら紹介しようか、予算はどれくらい?」

相場が分からず・・・取り合えず素泊まりで銀貨2枚くらいの所ってありますかね。


「え、君本気で言ってる?」

それどういう事ですか


「予算に見合うところはあるけど君、国王陛下から登城するよう王命出てるんだよね、多分馬車が宿まで迎えに来るよ。もうちょっと格式考えないといかんなぁ・・・・」


知らんがな


「それでは食処ピッグテイルではどうでしょう、あそこなら格式はともかく料理が美味しいし宿屋も併設してます、何より陛kゲフンゲフン貴族の方々もお忍びで訪れる程ですし安全対策もしっかりしてます」

格式張らずにリラックスできる所ですよ、とにっこりサリス女史がそう言います。


なんかそこでよさそうです、それでお幾らですかね?


「素泊まりで一泊銀貨5枚だったと思います」


予算オーバーですが仕方ありません。

5日間として銀貨25枚(日本円で約5万円)、後で戻ってくるとはいえキツイ。

路銀の手持ちが心許ない、自炊させてもらえるようお願いするか・・・ままならないなぁ。


融資という形でお金貸してくれそうだけど、古い考えの俺は借金って感じちゃうんだよね。

親方には指輪という担保になる品物を既に渡してるから気にならないんだけど。





「こんにちは、お客様を案内いたしました」

何故かサリス女史が食事処ピッグテイルまで案内してくれました。

宿泊受付の手続きも代行してくれてます。

有難いですがなんか裏がある様で怖いです。

実は近衛の諜報員って事は無いですよね?


受付を行いまずは素泊まり2日分を前払いします。

追加で泊まる場合はその都度支払い。

そして食事代を節約する為に自炊したい旨伝え、厨房を使わせてもらえないか交渉します。


答えはNO。

予想してましたがやっぱり部外者が入ると色々問題がある様で了解は取れませんでした。

そうでしょうね、理屈は分からないけど毒への抵抗力が無茶苦茶高いこの世界の人も食中毒とかウィルス関連の病気には地球人並みでしたから、安全衛生考えれば譲れないところなんだろう。


困った・・・けど仕方がない、王城から使いが来るまで王都観光も考えましたがまずは飯を確保しなければ。





そしてやってきました王都近郊、とは言っても俺の脚で30分程度の草原、陽も傾き始めてるので急ぎます。

ここは王都門兵からの情報から比較的近い狩場を聞いて移動しました。

今回も弓矢を携帯してきましたので兎狙いで食料調達です。

弓を構え、認識阻害と索敵全開で草原を早足で歩きまわります。


早速2匹の動物を確認、兎ではないです・・・アナグマです。

運がいい、夜行性のアナグマがまだ陽も沈まないうちに見つかるなんて。

兎と並んでアナグマも美味しい獲物、2本一緒に矢をつがえ放ちました。


いっぺんに2匹ゲット、すぐに血抜き、内臓を取り出し皮をはぎます。

今回皮は内臓と一緒に土に埋めます。

もったいないですが処理する時間が無いので。


塩と香草を丁寧に擦り込み、姿焼きの形に木の串を打ちます。

それから魔法の炎でじっくり焼いていきます。

とても美味しそうに焼き上がりましたがちょっと、いやかなりまずい事が起きました。


1頭だけですが魔獣が寄ってきたんですよ。

草原とはいえ普通はこんなとこにいないはずなのに。

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