第34話 何事も無い旅路からの王都
相変わらず馬車と併走している俺、クルトンです。
結局親書を確認した当日から急いで叔父さん達に事情を説明し、翌々日には王都に出発しました。
親方からは「まずは王都の宝飾ギルドに行け」と手紙、王都内ギルドの位置を記した手書きの地図を預かってます。
方向は分かっても道を知らないので王都方面に向かう商隊に同行を依頼、騎士団副隊長フォネルさんからの紹介もあり一応護衛と言う形で同行することになりました。
そして今となります。
親書を運んできた名代と一緒に王都に向かうという選択肢もあったのだがデデリさんが「やめとけ、死体が増えるだけだ」と物騒な事を言い出したのでその通りにした。
俺もわざわざ厄介ごとを抱え込みたくないので二つ返事です。
先頭の馬車に併走しながら警戒を続けます。
この街道は王都に繋がっている事から通行量も多く、騎士団も定期的に巡回するので何か起きる事はめったにないそうです。
有ったとしても馬車の車輪の故障とかそんなもんです。
なので1週間で無事王都に到着しました。
初めての長期移動でしたがやはりこの身体は優秀で、野営の夜番も難なくこなし泥濘に取られた車輪を馬車ごと持ち上げたり、馬番をしたり旅の終盤には商隊の皆さんから「マジでまた頼むよ、本当に」と言われるまでに仲良くなりました。
そう言ってもらえるのは嬉しいのですが俺、本職は宝飾職人ですからね。
「またまた~、冗談キツイぜ」とか言われて全然信じてもらえません。
まあ、誤解されても実害ないので構わないんですけど。
商隊と一緒に王都の門をくぐり、そこで直ぐに俺とは解散になります。
「帰るときは商業ギルドに必ず顔出せよ、必ずだぞ!」
と先頭の馬車の御者さん・・・・貧相に見えますがこの方が今回の商隊長だそうです・・・から声を掛けられ頷きます。
「絶対だぞ!」
まだ言ってます。
よっぼど俺が作った道中の食事が気に入ったんでしょうね。
とりあえず王都の宝飾ギルドに向かいます。
親方から預かった地図だけが頼りです、ちょっと見ましたが結構詳細で迷う事は無いでしょう。
交易都市には『宝飾ギルド』なるものはありませんでした。
正確にはこの国の、王都の宝飾ギルドに工房が加盟している事にはなっているんだそうですが、交易都市内では情報交換、人員の融通、給金、祭りの時の協賛などの相談するくらいの寄り合いみたいなものだそうです。
年会費は徴収されるそうですがそれなりの見返りはある様なので不満は無いそうです。
大通りを散策がてら歩いていきます。
さすが王都、人が多い。
俺はそれを無視するようにテクテク歩いていきます。
ここでも身長200cm程の俺は人波から頭二つほど飛び出てますが、道行く人々は誰も気にも留めません。
大男が珍しくない訳ではなく俺の認識阻害のお陰です。
今の俺は路傍の石と変わらない存在となっているんでしょう。
正直助かります。
そうして人ごみに阻まれることなく無事宝飾ギルドへ到着しました。
建坪は小学校の体育館位でしょうか、2階建ての結構大きな建物です。
派手さは無く質実剛健と言った感じ、好感が持てます。
建屋内に入り受付にいるギルド員、受付嬢さんに話しかけます。
すみません
「ヒッ!!」
ああ、すみません、すみません、驚かせてしまって。
交易都市コルネンのカサンドラ宝飾工房から来ましたクルトンです。
ギルド長への手紙を預かってきました。
手紙を受付嬢さんに渡します。
「申し訳ございません、手紙であってもギルド長への上申は手順を踏んで頂かな・・い・・・と・・・・?・・・!!」
困ったようにしていた受付嬢さんが封書の表を確認していると段々顔が険しくなっていく。
「少々お待ちください」
キリッとした顔で手紙を奥に運んでいきました。
待たされるのかな?と思ったら1分もたたず受付嬢が戻ってきます。
二人で。
「こちらにどうぞ」
一緒に来た人と受付を交代し最初の受付嬢さんが俺を案内する。
受付右の廊下から階段を上って2階へ、そのまま廊下を進み突き当りの部屋のドアをノックします。
ドアには「本部長室」の札が付いてます。
「コルネン、カサンドラ宝飾工房のクルトン様がいらっしゃいました。」
「いいよ、入って」
ドアの向こうから返事が返ってきます。
受付嬢さんがドアを開け俺に入る様促します。
えっと初めましてカサンドラ宝飾工房のクルトンと申します。
ギルド長宛の手紙を預かってきました。
その言葉で受付嬢さんが手紙をギルド長?に手紙を渡します。
あ、やっぱりギルド長で良かったんですね。
「うん、初めまして、宝飾ギルド王都本部、本部長のシズネルだ。まあ、座って」
とソファーを進められます。
言われるがままに座ると本部長が話し始めます。
「慣習で王都宝飾ギルドのギルド長も兼任している、手紙は今読ませてもらうからちょっと待っててね。サリス、お茶をお出しして」
意外と気さくな人だな。
暫くすると俺の前にお茶と茶菓子が置かれた。
うん、美味い。
使ってる素材その物の質が違うね・・・こんな上等なの俺に出していいの?
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