第33話 真偽官
また旅の準備をしなければはなりません。
なんか面倒臭くなってきた俺、クルトンです。
国王陛下、侯爵様の親書を確認し、Yesの選択肢しかない俺の気持ちを察したのかフォネルさんが話しだします。
「国民ではあるけれど家臣ではないクルトンに対しては拘束期間に発生する損料と交通費、宿泊費、食費が支給される様だね。金銭的損害は無いようにすると親書に記載有るから他に何かあれば領に戻ってから、このコルネン領主館の受付に申し出ればいい。そう取り計らっておくよ」
・・・機会損失って概念無い様だから、ここまでしてくれる事自体特別扱いなんだろうと思うが、いかんせん面倒くさい。
仕方ないが支度するか・・・明日から。
「それと・・・」
まだ何か有るんですか、悪い予感しかしませんけど
「多分、あくまでの私の予想だが今回陛下に謁見する時、君の身体能力と魔法付与技術について言及されるだろう。そんな酷な事を聞かれる事は無いだろうが謁見の間にいる近衛騎士の中には絶対真偽官が紛れている。質問には嘘偽りなく答える様に。隠し事は無駄だと思っておいてほしい」
紛らわしいですが『真偽官』は商業ギルドの『監査官』の様なもの。
ただしこちらは近衛騎士団の中の一つの役職で真偽判別の能力に特化しており日々集積される国内情勢と魔獣、軍事に関わる情報を精査、統括する役割も果たしているかなり偉い人。
ちなみに貴族が絡む裁判では素顔を隠した状態で必ず裁判官の隣にいるそうです。
貴族の権力が、判決に影響を与える事を防ぐ為の処置だとか。
誓約の魔法で自分も嘘をつけない様になっていて、もし嘘をついた場合は額に「肉」の文字が浮かび上がり・・・はい、嘘です。
顔面含めた体中に黒いムカデの入れ墨が浮かび上がり聴覚と声を失うそうです。
これは犬笛を吹くような行為も抵触するとか、嘘とは違うのに厳しいなあ。
・・・俺なら幾ら金を積まれても絶対になりたくない職業です。
そう言う事でしたらとりあえず誠意をもって対応すればいいって事ですよね?
「そうだ、ただし理不尽なことが有れば構わずぶっ飛ばせ。お前にはそれが許される」
ん、デデリさんどういうことですかソレ?
「ああ、誤解が有るから私から説明するよ、単純なことだ。この国・・・とは言えなくなったが、国民に君の様な者がいたって実績ができてしまったからね。とりあえず、近衛含め騎士団内、異国間闘技大会で1対1の公式試合でデデリ隊長は無敗だったんだよ。」
なんでもデデリさんは精霊の加護を強く受けているとか。
1頭相手なら単独で魔獣を討伐できる御仁で、初めて手合わせした人からは「化け物か!」って必ず言われるらしい。
多分先祖返りなんだろうな、人工生命体の遺伝子が強く出てるんだろう。
その証拠ではないがデデリさんの実子は一人だけ。
4人奥さんいるのに連れ子を除いた実子は一人だけだそうだ。
ほう・・・(汗)。
「つまり腕っぷしで君に勝てる人間は国内にいないだろう。しかも素手で、ボディーへの一発であれだったからねぇ・・・魔獣を連れてきても君に危害を加えるのは厳しいかもね。だから何か有っても城の連中如きじゃ君と敵対する事なんて出来ないんだよ」
丸腰でも抜き身の長剣突きつけてる様なもんだから、よく謁見する気になったなハッハッハッと軽く笑ってます。
「そのうえ国王陛下から客人として招かれている」
え、そんな文面には読み取れませんでしたけど?
「文面じゃそうかもしれないが、そもそも陛下が公文書を発行してまで平民を呼び出すなんてことが異例中の異例なんだよ、普通なら連れてこいの一言で済むんだから」
なんか話が大きくなってきたような。
「ああ、大事だよ。周りの貴族連中もこの街に間者を送り込んでくるだろう。仕事が増えて大変になるよ」
フォネルさん苦笑いだ。
でも多分大丈夫、俺の認識阻害が良い仕事してくれるだろうから。
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