第29話 品評会

肩の荷が降りて一息ついてる俺、クルトンです。

さて、改めて指輪の評価を聞かせてもらいます。


第一夫人

「まずはつけているストレスが無いわね。言い方はあれだけど指輪なんて無いみたいに自然。重さでやっと思い出すくらい」


ほうほう、付け心地は最も重要視していた事の一つなのでそう評価していて頂けるのは素直に嬉しいです。

材料を編み込んでいるので指輪の内側、はめる指に触れる面はどうしても凹凸があります。

平らにする事も考えましたがわざわざ編み込む意味が薄くなります。

平らにしてしまうと見た目上は大量生産用の型で同じことができてしまいますから差別化を図りたかったので。


第二夫人

「・・・なんだか肩が軽いわね、これが付与した魔法の効果かしら?」


おお、もう効果が出ましたか。

多分そうだと思います。

もう少ししたら厠へ行きたくなると思いまsゲフンゲフン、もう少ししたら休憩入れますので少々お待ちください。




「・・・本当に効果でるんだな。教会なんか似た様な売り文句でお札販売する事あるが、ありゃお守りみたいなもんだから効果なんてねえ」

いやいや、そんなぶっちゃけていいんですか。


それはともかく、気に入ってもらえたでしょうか?

「ああ、あの顔みりゃ分かるよ、上出来なんてもんじゃねえな」

未だに奥様達が指にはめた指輪を眺めニコニコしています。


では暫くこれを見本にして宣伝、奥様達に活躍して頂きましょう。




親方が奥様達の笑顔を一頻り眺めホッコリした後に俺へ話しかけます。


「しかし、銘はまだ打ってねえのか?」

銘ですか?ああ、ここです、この丸いヤツです。

第一夫人の指輪を一度外してもらいリングの刻印の一部を指さす。


「んん?・・・この刻印魔法陣じゃねえのか?

・・・複製はできないだろうけどよ、お前の銘と分からんぞコレ」

大丈夫です。


「なんか・・・これ以上聞かない方が良いか」

いやいやいや、自慢させてください、この刻印1個打ち込むだけで丸1日かるんですよ。


「・・・このレベルの指輪そのものは3日程度で2個作れるって事じゃねえか、ソレ」

はい、そうとも言います。

では説明しましょう、少なくとも見た目は大したもんではないです。


「「「(絶対嘘だ)」」」





銘と言っても従来は刻印するだけなので偽物が出回ると職人でも判別難しいのはご存じのとおりです。

宝飾専門の鑑定士か制作した工房に鑑定をお願いしないと本当の意味での真偽は判別できません。


親方も当然知っている事をわざわざもったい付けて話します。


俺の作品は貴族様中心に流通することが前提ですのでなおさら銘の複製ができない様にするべきと考え魔法陣にしました。

幸い俺は微細な刻印を打てるのでこの刻印の大きさいっぱいに魔法陣を詰め込みました。


「・・・だからお前の銘と判別つかんのだが、魔法陣の知識持ってりゃ別なのかもしれんが」

多分魔法陣の知識あっても厳しいと思いますよ、呪術系のトラップを混ぜてますから。

でも俺の作品と鑑定するのはすこぶる簡単です、条件はありますけど。



「いよいよこの先聞かない方が良いんじゃないか?」

親方がそう目で訴えますが、奥様達は好奇心が抑えきれない様で前のめりです。


「では」と俺の人差し指に小さく青白い炎を灯します。

このように炎などの魔法由来の灯りを魔法陣に当てると・・・


フッと魔法陣からホログラムのように映像が浮かび上がります。

白狼です。

伏せで寝ている白狼の耳がピクリと動き首を上げ四つん這いに立ち上がった後に・・・お座りの体制に落ち着きます。

ここでお座りの白狼の下に【クルトン】の銘が浮かび上がりました。


これが白狼印、クルトン作品の銘になります。

ここまですれば複製する奴いないと思うんです、どうですかね?



唇を震わせて親方が声を絞り出す。

「刻印ってレベルじゃねえ・・・」

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