第28話 サンプル完成

大繁盛でちょっと戸惑っている俺、クルトンです。


本日は水曜日、毎週この日は職人を抱える工房のお休みの日です。

工房街一斉に休みますのでこの日は俺の指輪作成も一旦休止となります。


それで休みとなる水曜日はパン屋手伝いますよと叔父さんに進言した結果、揚げパンを販売する日となりました。

この日に限り揚げパンは俺が作ります。


俺が作ったパン売って良いんでしたっけ?

あ、特別な日って事で別の職人が焼いてる事をお客にもちゃんと説明すると、そうですか問題ないなら構いません。


以前から余裕が有るときは叔父さん達が作って販売してたんですが結構な人気で次はいつ販売するのかよく聞かれるんだそうです。


なので水曜日を当店の『揚げパンの日』として制定、午後だけ揚げパンを販売する事にしました。

なぜ午後だけかと言うと午前中はきな粉を造らなければならないからです。

俺が石臼ゴリゴリ回してひたすら作ります。


揚げパンの販売は午後限定にもかかわらずかなり盛況で整理券を配るまでになりました。

数字を書いた板ですけど。

売り上げに貢献できたのは嬉しいのですがトラブルの種にならない様に注意が必要かも。





そんな水曜日が明けて翌朝、差し入れ用の揚げパンを持って工房へ出社。

早速指輪づくりに入ります。


直径3mm程度の魔法陣を刻んだ材料の棒を3本、しっかり蔓の意匠も施したそれを三つ編みにしてリボン状に形成していきます。

その後以前やったのと同じ要領でくるっと形成しロウ付け、リング状に整えます。

魔法陣に影響与えない様に花と葉の意匠のロウ付けを行い魔法陣の動作確認。


まず第一夫人用の朝顔の意匠を施した指輪を研磨前まで仕立て、この日はここで終了。



翌日、2個目の第二婦人用の指輪製作に取り掛かります。


こちらは蔓バラの意匠、1回目で大体の感覚がつかめましたので滞りなく2個目の指輪も完了しました。


さらに2日間をかけ、両方の意匠に狂いが無いか何度も確認し、銘を魔法陣として彫り込み、2個一緒に最終研磨を施し完成となりました。

材料の精錬から数えて凡そ6日間、一番最初に作った作品とは別の意味で全身全霊を掛けた作品になります。




作業場から出て親方に完成したので仕上がりを確認してほしいと伝えます。

実質俺のデビュー作になるので世に出る前に親方にも太鼓判押してもらいたかったので。


親方と俺の作業場に戻るとすでに奥様達が待機していました。

・・・一緒にご覧なられますか?


「「もちろん」」

本当に仲いいですね。


では親方、この二つになります。

厚手の布に優しく置いた指輪を手に取り確認していく親方。

まずは朝顔の方から見ています。


「こんな事も出来るのか、大した腕だ」

有難う御座います。


「この花の意匠は削り出しか?」

いえ、別で作ったものをロウ付けしました。

材料が潤沢にあるわけではないので。


「無難なところだな、しかし見事だな。魔法の付与内容を聞いても?」

サイズ調整機能と血行促進の機能を付与しています。

サイズ調整は以前の説明と変わりません、血行促進は新陳代謝が良くなり、冷え性の予防にもなります。

女性にはうってつけのかと思い追加しました。



「効果は?」

個人差があるでしょうから使ってみない事には何とも言えません。

ですが、実感できるくらいには強めかと。

これは奥様達に試していただければ正当な評価を下してもらえると思います。


奥様達が親方の両肩から指輪をガン見しています。

ちょっと親方も困っているようです。

でも嬉しそう。


朝顔の意匠が第一夫人、蔓バラが第二夫人用と説明すると、今度は二人同時に親方をガン見します。


「も、もうカミさん達にはめてもらっていいかな?」

ちょっと心配そうに俺に聞いてきます。


どうぞどうぞと促すと、奥様達がさっと指輪をつかみ前と同じく右中指にはめ魔力を通しました。


丁度良い大きさに調整されるとその意匠を眺め「ふう」と息を吐きこう言いました。


「「これは良いものです」」

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