第26話 【回想】家族の思い3

一番最初の記憶は僕を覗き込む兄さんの顔。


とても大きくて、厳しくて、そして優しかった。

まるで父さんが二人いるようだった。

3歳しか歳は離れていないのに。


兄さんは体が大きくて、力が強くて、とても博識だった。

不思議に思う事が有ると何でも教えてくれた。


雷の音を怖がって泣きそうになる僕に

「ピカってなった時が一番怖くて、音は何もしてこないから大丈夫」


ジュウドウを教えてもらっている時も

「正しい動きはただ効率を求めた物じゃなく、世界の理を表現しているんだよ」


数字の勉強していた時は

「この世界の事象が数字で置き換えられる時が来るかもしれない、今じゃないけど未来のその時の為にも勉強しないと」



正直理解できなかったけど、多分理解している兄さんは他の誰とも違ってて特に女の子たちからは怖がられた。


何言ってるか分からない時が有るって。

とっても体が大きいから話してる時いつも上から睨まれてるように感じるって。



そんな事ないのに、兄さんもそんな誤解を気にしなかったものだから成人しても結婚の話は全然来なくて父さん、母さんがちょっと心配していた。


誰よりも優しくて強い兄さんは、それ故に誰に対しても優しくて物怖じしなかった。

時々休憩に村に寄る騎士団の人とも普通に会話して、村の人達は無礼打ちを心配してたくらい。



12歳になった時、兄さんが弓を教えてくれた。

父さんも弓は得意なのだけど、兄さんの方か教えるの上手いからって。


とっても厳しい練習だったけどそこから得た物はとても大きかった。

「獲物だけじゃなくて射線を意識するんだ、猪だったら頭、前足、目が向いている方向から・・・矢を放ってから届くまでの時間で標的がどう動くか、それを予測して未来を狙うんだ」


やっぱりこれを聞いたその時は分からなかった。

でも最初の狩りで野豚を見つけ、狙っていた時に矢の射線が光った様に見えたんだ。

僕と標的を結ぶ一本の道。

後はそれに沿わせて弦をはじくだけ。


矢は狙い通りに心臓を貫き一撃で決着した。


兄さんが伝えたかった事はこれなんだと確信して、

少なくともその瞬間だけは兄さんと同じ高みに至れた様な気がして、

とても、とても嬉しかったんだ。

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