第23話 髭モジャが現れた
治癒魔法を団員さん達に褒められご満悦の俺、クルトンです。
副隊長さんに促され、修練場に有るちょっとした東屋の日陰に入り目的の交渉に入ります。
副隊長さんはじめ顔見知りの団員さんは村で俺の施術を受けた事が有り、按摩部屋の設置に二つ返事で承諾。
他の団員さんたちは「それってどんなもんなんだ?」って感じだったので今日は特別に無料体験を急遽開催することにしました。
一応時間は2時間、按摩未体験の団員さん優先で一人5分くらいでサクサク回していきます。
結果、すっかり疲れが取れたと大好評でした。
でしょう、でしょう、そうでしょう。
後はお値段の交渉です。
ここは1人幾らって言うよりも騎士団の福利厚生扱いにして頂いて日曜日の14時~17時まで、3時間の時間拘束でお値段銀貨6枚でどうでしょう?
1時間銀貨2枚(日本円で4千円位)、専門高等技能職の時間単価としては結構頑張った金額だと思いますが。
あ、そうですか、オッケーですか。
即答ですね。
契約書もすでに有るんですか、拘束時間、金額記入してサインするだけ?、準備良すぎません?
・・・ちょっと待ってください、この契約書だと遠征時の拘束時間の記載もあるじゃないですか。
行きませんよ遠征にとか、勘弁してください俺軍属じゃないんですよ。
訂正します。
・・・はい、確認と訂正、サイン終わりました、これでお願いします。
なんか副隊長さんはじめ団員さん達があからさまにがっかりしてます。
では次の日曜日、開始の30分前には伺いますので施術場所の確保をよろしくお願いします。
毛布は持ってきますのでベッドの準備とかも。
コロッセオ玄関口でお別れのあいさつしたところに俺と同じくらいのガタイの髭モジャがいきなり目の前に立ちふさがった。
えっとクルトンと申します、どちら様でしょう?
「隊長のデデリだ、お前がクルトンだろう?」
ええ、そう名のらせていただきましたが・・・。
話聞いてないのかな、この隊長さん。
副隊長さんを見ると顔に手を当て天を仰いでいます。
うん、ヤバい人なんですね、俺ピンときました。
「ちょっと遊んでいけ」
そう言うと俺の腕をつかみ修練場に向かいグイグイ進んでいきます。
死合やろぜ!とか言い出しませんよね、この隊長さん。
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再びやってまいりました修練場、まだ訓練中の団員さんが沢山います。
隊長さんが隅に置いてある訓練用の武器置き場から槍を一本取ると俺に放り投げてきました。
「たしか両手持ちの武器なら何でもいいんだよな」
・・・何で知ってるんですか?
眉を顰めチラリと副隊長さんに視線を向けると「本当にスマン」って感じで恐縮してます。
スキル・・・とは言ってないが俺の武器の技能の大まかな内容は副隊長さんも知っています。
スキルの練習してた時、丁度騎士団が休憩で村に寄った時があった。
隠すのも何か違う様な気がしてたから「コレ普通ですよ、何か問題でも?」って感じでいたところを副隊長さんが目撃したんだろう。
その話しを聞いて隊長のデデリさんが興味を持ったってところか。
デデリさんは兜を装着、フル装備で木製の大槌を肩に担ぎ準備万端の様子です。
俺、この試合受けてないんですけどやらないとダメですか?
団員さんが皆後ろに下がって修練所中心付近にスペースができます。
もう一度副隊長さんを見ると両膝を地面について両腕を胸の前で交差し上半身を屈めています。
日本でいう土下座と同じ意味の姿勢です。
騎士団のこの副隊長さんはもちろん貴族です。
しかも騎士爵ではなく男爵だそうです。
現場が性に合ってると笑って話している気の良いおっちゃんです。
俺が小さい頃からコルネンの事を色々教えてくれたのはこの副隊長さんですし、恩も感じています。
その貴族様にあんな恰好されたら断れません。
「はぁー」と皆に分かるようにため息をつくと隊長さんに確認します。
ルールは?
「無い」
良いんですか?
「使う武器は練習用、それだけだ」
・・・わかりました。
俺は左半身になり両拳を顔の真正面に構える。
そして空気に溶け込むと開始の合図を待たずに凡そ10mの距離を越え、鎧越しの右脇腹に左フックをめり込ませた。
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