第21話 デジャヴ
なんか前にもこんなシチュエーションあったなと戸惑う俺、クルトンです。
「こうなると、やっぱりうちの工房では雇えねえなぁ」
・・・今、そう言われると思ってました。
理由をうかがっても?
「そもそもお前がこの工房で身に着けられる技術は無い」
ああ、そういう事ですね、分かります。
でも、技術以外にも身に着けたいものがあるのです。
材料の仕入れ先との交渉や販売先の開拓、損をしない納税方法とか。
「宝飾技術と関係無えだろ、それ」
そうなんですけど、俺に足りないのは設備と人脈です。
具体的に言えば設備や仕入れ先、販売先を一から構築するのにはコストも時間も足りません。
前にも話した通り目安ですが2年間の制限が有るので人の褌で相撲を取りたいんです、俺は。
「ぶっちゃけやがったな・・・その例え話しは良く分からねえがこの工房の販売網に乗っかりたいと?」
はい、図々しいのは分かっていますが、それを押してでも成し遂げたい事が有るんです。
ここで俺がなぜコルネンに出稼ぎにきたかを説明する。
後ろに控えている奥さん方が「どうにかならない?」、「腕は確かなんでしょ?」と俺の応援してくれるようになりました。
もうひと踏ん張り。
「あー何もお前が駄目って言ってる訳じゃ無え。俺が言うのも何だがお前の作品を置けるほどこの工房の格が高くないってだけだ」
格ですか?
良いものを造り、扱い、卸し、販売する。
それに合わせて職人に敬意を払わないお客を排除し、良質なお客様を迎え入れ最高の商品とサービスを提供する。
そんな見方によっては身勝手にもとれる商売が宝飾店、宝飾工房には許されてると思ってましたが。
この業界はそうして格が担保されるのでは。
「耳の痛い話だが、それだけの物を扱うにはここの管理設備は貧弱過ぎる。今も厳重に管理はしてるが、お前の作品を狙ってえげつない盗賊に目をつけられでもしたら他の作品も根こそぎ奪われ破産する未来が見える」
おおう、なるほど説得力があります。
ままならないものですね・・・。
またもやガックリ肩を落としため息をつくと、それを見かねたのか2番目の奥さんが
「ならこんなのはどう?」
と案を一つ提案してくれました。
この奥さん、詳細は濁してましたがどこぞの男爵家のご令嬢だったようです。
若かりし頃はお転婆で天邪鬼で人に敬意を払うことが無かった為嫌われ者だったとの事。
本人がケラケラ笑って話してくれました。
家族だけは愛してくれたと、そっと呟いた時にはちょっと悲しそうでしたが。
今は、親方と出会ってからは人の道理を理解しそんな事は無くなったそうですが気の強さは変わらなかった様です。
奥さんの話は、俺の作品がそれ程の物であるならば実家の伝手で貴族連中の評価を受けたうえで贈答品として流通させてはどうかとの提案でした。
結婚、出産に限らず嫡子の初陣祝い(ここでは初魔獣討伐の事)、世襲した時等々、付き合いのある貴族に対して祝い事で贈り物を交わすことは普通に行われているそうで。
そこに俺の作品を使ってみては、との事だった。
いいと思います、でも大丈夫ですかね?
貴族との面倒事は勘弁なのですけど。
「それはうちの旦那が何とかするわよ!」
今度は親方の目が丸くなってました。
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