第18話 パン屋さんでのお手伝い
なんだかんだ有って、到着その日にそのまま叔父さんの家に下宿することになったクルトンです。
準備もあるだろうし初日は挨拶だけって話したんだけど「いや、宿代もったいねえだろ」と叔父さんから押し切られた。
なんか暖かいな。
今日は下宿最初の朝。
そしてここはパン屋、朝はすこぶる早い。
朝4時起床、前日に仕込んでいたパン生地を成形して起床とともに火を入れて暖めていた窯に入れます。
6時には店頭に焼き立てのパンを並べ、朝食用、昼の弁当用に買いに来るお客さんへの対応。
並行してパン生地の仕込み。
一部の御客にはパンの配達もしていますから交代で二人の息子さんが小さな荷車引いてパンを運びます。
食事は交代で。
目まぐるしい。
寝てていいよとは言われたが俺はまだ食費も入れていない。
この作業の中に今入れば邪魔になるだけなので一歩引いた場所から手伝えることは無いか観察する。
・・・窯への火入れと、次の日用の生地の仕込みでこねるだけなら問題なさそうだ。
すぐに使い物になるかは分からないが場を乱さない様、邪魔にならない様に手伝いを申し込んでみよう。
昼は宝飾工房を2店訪問、働かせてくれないか交渉したがあまりいい顔はされなかった。
結果は不採用。
結構厳しそうだな、考えが甘かったか。
紹介状は無いし、2年の期限付きだから本格的な弟子入りって訳にもいかないし・・・当たり前か。
まあ、諦めずに頑張ろう、1か月やって駄目なら本格的に按摩師で稼ごうか。
街中を適当眺めているだけでも疲れてそうな人結構いたしな。
お店に帰って採用駄目だった旨報告、気を落とすなって皆から慰められた。
気を取り直して朝に考えていた手伝いについて相談した。
忙しい時に人手が増えるのは大歓迎だとの事、ここまでは問題無い。
次に俺に何の仕事をしてもらうのが良いか?実際何ができるのか?を確認していく。
ゲームには調理スキルってのが有った。
食事、飲み物(主に酒とお茶)を作るスキル。
プレイしていたMMORPGでは習得できるスキルはとりあえず最大レベルまで育成していたからその類に漏れずこのスキルも最大。
ゲームと同じ料理の再現は材料の都合でできないものも多かったが、逆に材料が有れば短時間で高品質のものを大量に造る事が出来た。
はたから見るとその時の俺は計量もせずにものすごい手際の良さで調理しているそうだ。
ちなみに村の収穫祭で行われた余興の腕相撲大会では、優勝商品の俺謹製野豚のハム争奪戦で骨折者まで出る始末。(治癒魔法で治しました)
それくらい美味いハムだった。
だから後々パンを造るにしても悪い事にはならんだろうと楽観視していた。
なので試しに家族分のパンを焼いてみたんだ。
「駄目だ売れない、美味すぎる」
と叔父さん。
・・・それって駄目な事ですかね?
「駄目じゃない、けどお前がいなくなったらうちのパン屋は味が落ちたと噂になる。お前の技術を俺たちが受け継げるか自信が無い・・・ってかなんでこんなに美味いんだ?材料同じなのに」
そうだ・・・、俺はスキルに任せて良かれと思ってパンを造ったがここのパンは売り物だ。
ただ焼くだけでは無く安定して顧客に供給し続けなければならない。
ここのお店を贔屓にしてくれるお客は多いのだ。
そして俺が村に帰った後もパン屋は続いていく。
味が落ちてしまったら店の信用に直結する。
本来のこの店の味が、叔父さんのパンを焼く腕が落ちる訳ではない。
が、一時的にでも高まった味は元に戻るだけで味が落ちた事になってしまう。
叔父さん達のせいではないのに。
・・・そうだね、これはやめた方がいいね。
「い、いや、でも、でもよ家族で食う分には何の問題も無いぞ、むしろ俺はこれが食いたい」
?いいですよ、お手伝いできる日は私が焼きましょう、下宿させてもらっているんですからそのくらいはさせてください。
叔父さんはじめ家族一同両拳を天に掲げています。
話は戻って、お店のお手伝いとして一番最初に考えていた窯への火入れを俺の仕事にしようという事になった。
任せてください。
魔法で出せますし何なら1日中窯の中にスタンバイできますよ。
俺が離れても消えません。
と、青白い炎を10個顕現させる。
それを見た叔父さんが「薪、要らねえな・・・」と呟いていた。
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