第14話 トラブル発生・・・なのか?
面倒なことが起きました。
ちょっと憂鬱な俺、クルトンです。
休憩を終え馬車が動き出した途端5人の子供達が道を塞ぎました。
「ここは俺たちの村のもんだ、通りたければ金をおいていけ、食いもんでも良いぞ」
・・・君たちさっきからそこにいたよね?
隠れもしなかったから普通に遊んでいるものと思っていたのだけれども、やってること理解しているのかね。
今の君たち野盗と変わらんよ?
この世界の子供至上主義は絶対だと勘違いしそうだが、その認識は正しくない。
バカな子供は『可愛がり』という名の折檻を食らう。
昭和の相撲部屋かよ。
まっとうな大人になって、まっとうな生活をして、まっとうな子供を育てる。
強迫観念にも似たこの世界の価値観だ。
だからこういった子供は『可愛がって』やろうじゃないか。
「おい」と声を発すると、今まで行商のおっちゃんしか見ていなかった子供たちがやっと俺に気づく。
そして硬直している。
ガタイのいい俺が突然現れたように見えたんだろう。
そう、長年狩りをやっているとこんな能力も身につく。
認識阻害だ。
目に映ってるんだけど認識できない。
ドラ〇もんの秘密道具『石ころ帽子』の様な効果を発揮する能力。
気配遮断の上位互換だからねコレ、地味にすごいのよ?
だって隠れなくていいの、行動の制限ほぼ受けないのよ、対象の目の前にいても気づかれないの。
悪党がマスターしたらかなりヤバい技能。
控えめに言ってもチートじゃね?
目立ちすぎる身長200cm程の俺が森で狩りができるのもこの能力のおかげです。
再び認識阻害の恩恵を受け、未だ硬直している子供たちとの間合いを一瞬で詰めて拳骨をくらわす。
マジ殴りだと俺が泣いちゃう事になってしまうので優しく優しく・・・、しかし拳は尖りグーだ。
子供達には俺が消えたと思った途端、頭に激痛が走った事だろう。
「っっっっっっ!!」
子供達が頭を押さえ声にならない声を上げしゃがみ込む。
5人ほぼ一斉に。
あ、一人女の子だけ尻もちついて転がってる。
そして俺がこう言う。
「誰でもいい、村に戻って大人を連れてこい」
保護者と言うか責任者と話しないと事が始まらん。
暫くして、すぐそこの村から最年長と思われる男の子が頭のコブをさすりながら大人を連れて戻ってきた・・・12人、多くね?
「それで、あのう・・・どういった事になっているんでしょう?」
これまた年長者と思われるお祖父ちゃんが俺に問いかける。
実は・・・斯々然々でありまして、今回の落としどころを相談したいのですよ。
村のお祖父ちゃん・・・村長さんだそうな・・・の顔が青くなる。
それもそうだろう、この行商のおっちゃんはこの領地の”行商の許可”をコルネンの商業ギルドから買っている。
そう、買っているのだ。
行商の許可証は商業ギルト員しか購入できない、これは何を意味するのかと言うと「商業ギルドはギルド員を仕事中(今回は行商中)守ります」って保証、保険を掛けている様なもんなのである。
実際ここで揉めたら交渉役のギルド職員(もちろん専門員)が村まで出向いて、事情聴取を行った後にコルネンの裁判所に損害請求の訴えを起こすだろう。
略式だろうけど。
こちらは大した損害ではないが、今回は馬車を止め故意に時間を遅らせたって事で、拘束された時間を金額に換算される、多分。
しかし当事者となったギルド員の稼ぎに応じてではなく、全ギルド員の年間平均売上から相場を割り出し、それ基準で損害額が決まるのでそこそこ高額になる事が多いらしい。
平均と言っても大店のえげつない売り上げも加算されてるし、トラブルの抑止力の為にもあえて相場を高くしてるらしいからね。
こんなことだから村長さんが青くなったのも頷ける。
でも、俺も行商のおっちゃんもそんな事望んでないのよ。
面倒だし。
だから話し合いましょうよ。
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