第11話 【回想】家族の思い1
クルトンに出会ったのは森の中、この子が白狼に守られてグッスリ寝ている時。
狼の遠吠え・・・とは言えないただの鳴き声に混じって聞こえる泣き声。
はやる気持ちを抑えて分け入った森の中、突然出会った白狼。
一瞬腕の一本も覚悟したが襲われる事はなかった。
それどころか巣穴だろうか、そこから出てくるとこっちに来いといっているかの様な素振りに見えてゆっくり近づく。
白い肌に茶色い髪、王都でも見かける事はあるがこの地方ではさほど見かけない容姿だ。
痩せてもおらずとても健康的に見える。
この白狼が保護、育てていたんだろう。
連れて行けと言っている様で抱き上げても何もしてこなかったし、肌着にクルトンを包み帰ろうとすると巣穴に戻ってそのまま子狼を抱いて寝息を立てた。
耳はピンと立ったままなので警戒はしているのだろうが、役目から解放されホッとした感じにも見える。
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出来るだけ早く村に戻り妻のラーシャにクルトンを抱かせ事情を話していると
「子を授かった・・・私たちの赤ちゃん」
と何度も繰り返し呟き、涙をこぼしていた。
森に子を捨てる(想像だが)生みの親への憤りと、そのおかげで子を授かった喜びとが混じった様な顔・・・。
「そう、白狼様が授けてくれた俺たちの子だよ」
と囁くと、気付かぬうちに俺の頬にも涙がつたい、この手でそっとラーシャを包み込んだ。
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