第7話 魔法を教えてもらおう
引き続き俺、クルトンです。
魔法の事を母さんに聞きました。
コツと言うか自分が起したい事象をできるだけ正確に『世界』に伝える事が重要なんだそうです。
分かりません。
いや、言ってる言葉は理解できる。
でも世界に伝えるって何?
「例えば見えないけど自分の周りに神様がいて"この位の火を薪に灯してください、お願いします"って語り掛けるの」
と、母さんの弁。
痛い人ですか?おっと、すみません。
真面目に教えてくれてる母さんに失礼でした。
俺バイアスを通して考察すると、できるだけその事象が発生する原理、プロセスを詳細に正しく他の人に説明する様に思考すればいいという事か?
そうなのか?
でもそれじゃあ時間かかりすぎるんじゃね?
えっ、それを簡略化する為の技術が詠唱で、魔法を発現直前の状態でスタンバイさせておく詠唱の一時保持装置が魔法陣と。
作業の標準化ってやつですね!
懐かしい。
・・・なんか分かってきた、と思う。
つまりこの世界はそういった法則が実在するんだ。
深く考えない、もう一度試してみよう。
ここは家の中なので炎ではなく風を吹かせようと意識する。
気温の差ができて空気の気流の上昇と下降ができて上がった空気の隙間に冷たい空気が流れ込んで・・・。
フサァと俺の髪が揺れて、隣にいた母さんの香りが届く。
風、吹いたんじゃね?
鼻穴膨らましてドヤ顔で母さんを見るが相変わらずニコニコしてた。
・・・気付いて無いみたいだ。
もうちょい頑張ろう。
結論を先に言えばゲームの様な攻撃魔法は使えない。
俺の場合は戦闘の補助的な使い道くらいしか役に立たない感じだ。
炎であれば狙った場所に松明程度のものを出すくらい。
それでも敵の体内に直接出せればある意味とても恐ろしい魔法なのだが対象が有機物、又は無機物だろうがそんな事は出来なかった。
無理かぁ・・・と肩を落としていると母さんがコロコロ笑っている。
王都にいるらしいアークメイジと呼ばれている凄い魔法使いも俺がイメージしている様な魔法は無理らしい。
でも何人かで大掛かりな魔法陣を使い局地的な大雨、地震を起こす事は出来るとか。
気象操作なんて、そっちの方がヤバくね?
出来る様な気がしてきてたんだけどなあ、魔法が無い前世の記憶に引っ張られたのかな。
でも使えないよりは何倍も良い。
搦手でもいいから有効活用していこう。
さて、人の持っている時間は有限だ、次々検証進めていこう。
次に試したのは治癒魔法、ヒールとかそんなやつです。
これも結論から先に言います。
俺、按摩師で食ってけます。
コレは凄まじかった。
まずは「いっつも肩が凝って大変なのよねー」が口癖で俺の乳母にもなってくれたおばちゃん。
吾輩がちっちゃい頃は大変お世話になりました。
今でもこの方には頭が上がりません。
驚異的な胸囲を誇るその人の肩に手で触れ、血流の淀みを整流し老廃物を体外に放出させる・・・イメージ。
これに合わせて首と肩、肩甲骨辺りまでを揉む、ありがとうの感謝と共に。
効果は覿面でおばちゃんの体はみるみる上気し、スックと立ち上がったと思ったら厠に直行。
俺、肩揉んでたんだけどな・・・。
3分もやってないのに肩は軽くなるわお通じは良くなるわでとても感謝された
いえいえ、こちらこそその節は・・・なんて言ってる間に次の人。
120歳のお爺ちゃん、予想通り腰が痛いとか。
・・・この人いつからこの開拓村いるんだろう?
思考がそれた。
しかし、腰大変だよね。
筋肉のバランスとか日常の姿勢とか、やってる仕事の具合とか、原因は色々言われるけどレントゲンでわからない様なもんは痛み止めくらいでしか対処できないのよね。
俺も前世で痛めた事あるから分かる、辛い。
そんなんだからこの世界では是非腰痛を治る病としていきたい。
今思った。
床に毛布を3枚重ねて敷く。
うつ伏せになってもらいそこに俺が馬乗り状態、体重は勿論かけない。
両手を腰に添えてさっきのイメージの他に筋肉や筋が超回復する状態、骨とその間の軟骨にカルシウムとタンパク質で補強されるイメージを。
モミモミ、モミモミ、モミモミ・・・。
あ、寝た。
と思ったらすぐ起きた。
来た時は膝を曲げ、小さな歩幅でトボトボといった印象だったその歩き方もシャンとしてスキップを披露するくらいに回復した。
やっぱりこの世界の120歳すげえな。
いやいや、いやいや違う違う。
俺は按摩師のスキルを確認したいわけじゃ無い。
治癒魔法の検証をしたいんだ。
で、やってまいりましたいつもの森です。
そんで獲物を探しまして、おっといました安定の山鳩です。
弓を引いて今回は羽の根元目掛けて矢を射る。
見事狙い通りに矢が当たり山鳩が地面に落下、トドメを刺していないのでまだバタバタしてます。
痛みを長引かせて申し訳ないが検証に協力してもらう。
返がついていない矢を抜いて傷口に手を翳・・・さない。
触れずに肉の細胞が増殖し骨、血管、神経等が再生していくイメージのまま傷口をガン見する。
スッと何かが抜ける感覚があって、うん、成功。
傷はみるみる塞がり、バタバタしてた羽を動かす動作にぎこちなさが無くなった。
心なしか山鳩もキョトンとしてる。
そして「今日は協力してくれたからな」といって山鳩を掴み上げ軽く空に向けて放りだす。
パタパタと飛び去っていく山鳩に向かい
(もっと肥えて帰ってきます様に)
と合掌した。
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