第4話 妹たちが生まれた
6歳になりました、俺クルトンです。
妹たちが生まれました。
そう!双子です。
お母さん頑張った。
凄く、すご~く頑張った。
弟生まれた時もテンション爆上がりでしたがほぼ3年の内に3人目の子供が、しかも今回は2人いっぺんにという事で村全体がハイテンションです。
ここ数年で分かった事は、この世界の人は体は頑強なのに出産の危険性や病気への抵抗力に関しては地球人とさほど変わりがないって事。
毒への耐性はめちゃくちゃ高いのにウィルスが原因と思われる病気にはめっぽう弱いし、産後の体調の回復速度が体の頑強さに見合っていないくらい貧弱。
なので通常の出産でも大変なのに双子となればそれは文字通り命がけで、無事に出産が終わったと分かった時には村中で歓声が沸き上がった。
全人口300人くらいの村から湧き上がる歓声とは思えない音圧だったね。
あまりに煩くて産婆さんにキレられてたけど。
で、今は俺と弟の御下がりのベッドに二人寝かされている。
妹の容姿はというと、一言でいえば弟そっくり。
故に可愛い・・・。
嫁に行くなんてなったら俺泣いてまうな。
しかも2回。
ちなみに父さんはすでに泣いている。
妹たちが生まれてから1日1回は泣いている。
大人なのに感受性豊かすぎだろって突っ込みそうになった。
弟はあまり分かってはいない様だけどみんな嬉しそうなのでずっとニコニコしている。
とても可愛い、血は繋がっていないけどさすが俺の弟。
うん、これからは弟、妹たちを守れる様に、トレーニングをより本格的にしていかなければなかろうて。
両親、特に母さんからは「そんな事しなくてもいいのよ」って言われるのだけども・・・なんか心配じゃん?
で、トレーニングをしてると分かったというか気づいたというか俺の中で試してみたい事が生まれた。
この世界は所謂『ファンタジー世界』と言った事が有るが、まさしくその通りで地球でいうところの物理法則がまだ確定していないあやふやな世界の様だ。
指先から種火の為の炎やそれを調節する為の風を吹かせたり、魔法陣らしき文様と詠唱で探し物の場所を特定したりって事が当たり前のように行われている。
お婆さんが溜池をショートカットして水面を歩いて渡っているのを見た時は度肝を抜かれたし。
もしかしたら先の大戦争で世界の理まで歪める何かが有ったのかもしれない。
仮説・・・というか俺の妄想かもしれないが。
ここまで話を広げると何をもって検証していけばよいか全く見当つかないので、俗に言う魔法、超能力、ゲームでいうところのスキルの様な不思議現象を己の身をもって実験していこうと考えたのだ。
実は前世の記憶が沸き上がった時、一緒に体に馴染んだような別の情報が有った。
MMORPGと呼ばれるゲームの情報だ。
40歳位からだったか、亡くなるまで凡そ20年超の長きにわたり続けてきたゲームキャラの情報が体に入ってきた様な感覚が有った。
言葉にするのが難しいが脳への記憶ではなく体への情報として。
そのキャラクターで使用していた、愛用していた両手武器用のスキルを思い出し行動に移したらどうなるか。
ゲームでは金属製の剣、斧、鎚だったが当然今は無いので薪にする前の木の棒を1本借りて家の裏手に移動する。
標的として地面に薪を一本立てる。
・・・地面が平らではないのでコロン、コロンと転がりやっと立てる、これだけで一苦労。
穴掘って先っちょ埋めればよかったな、今更だけど。
標的までの距離は目視で10m程だろうか、棍棒代わりの薪を両手で持ち上段に構え思いっきり踏み込む、と同時に振り下ろす。
薪が粉々に砕ける『パン』といった破裂音が響き渡る。
凡そ10mの間合いをたった一歩で潰し、木材とはいえ粉々に砕いたこの結果。
しかも砕いた武器代わりの棒も木製なのにこちらは無傷。
頬をつたい顎先から汗が一滴落ちる。
格好つけて言えば残身を保ったまま動けない、驚きでだ。
(やべえ、俺まだ6歳なのにこの威力かよ・・・)
この世界の暴力がどんなものかまだ知らないが、妹たちが嫁ぐその時まで悪意のそれから守る力は手に入れられそうだ。
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