第38話 呑まれる
「はぁ……レーヴァテイン」
本当はこの剣は出したくなかったんだけど……魔力の盾や普通の剣じゃあの刀は防ぐことができない。
とにかく石化させるなよ〜。頼むぞ〜。
必死に剣に念を送る。俺が主人だというのならこれくらいの事は聞いて欲しい。
「ッ! なんだその剣は……随分禍々しいな」
「魔剣レーヴァテイン。そっちの刀と一緒さ。特別な力を持った剣だ。相応しい相手には相応しいものをそう思うだろ?」
俺は剣を構えて相手の動きを待つ。
向こうのスピードを俺が目で追う事は不可能に近いならば近づいてきた瞬間にカウンターを入れる。それしかない。
さらに炎、雷、氷の魔法を展開して相手の攻撃できる範囲を狭める。
「どうした来ないのか?」
「言われなくても……はぁ!」
刃が目の前にあった。それをなんとかレーヴァテインでガードする。
早い!?
先程よりもさらにスピードが上がっている。重力魔法に適応したのか?
これ以上重力を上げたら他の奴らが耐えられないだろうし……それはできないな。
「やるな。けど……」
転移魔法で俺と鬼瓦さんの位置を入れ替える。
刀だけを入れ替えるのは無理そうだが、本体も一緒ならできるみたいだ。
「しまっ!?」
展開していた属性魔法が鬼瓦さんに直撃する。
「なかなか硬いな」
気配で分かる。鬼瓦さんは生きている。それもピンピンしている。
鬼瓦さんは後ろに飛んで俺との距離をとった。
俺は先程と同じように魔法を展開して相手の動きを待つ。
ワンパターンだと言われたらそれまでだが、俺から切りに行っても当たるかどうか……
いや、魔王として少しやり方が汚いがあの方法なら……
「来ないならこっちから行くぞ!」
俺は鬼瓦さんへ向けて走り出した。鬼瓦さんも俺へ向けて走り出した。
今だ!
俺は亜空間の短剣を取り出して鬼瓦さんの右足に短剣を飛ばす。
「ぐっ!?」
不可視の攻撃だ。これを避ける事はいくらスピードがある鬼瓦さんでも無理だろう。
鬼瓦さんは大きく体制を崩したがまだ切りかかってきそうだ。仕方ない。こっちも切る!
「はっ!」
袈裟斬りを繰り出すと見事にそれがヒットする。
「グハッ!」
直撃ではないが、かなりのダメージを与えた筈だ。このままなら……
刹那心臓がドクンと跳ねた。
「は?」
声を漏らしたのは俺だ。剣を持っている右手を見ると剣から触手が伸びていて右手を突き刺している。
何が起こって……この件で人を切った事はないがそれが原因で……
そして俺の中にある感情が起こってきた。それは酷い怒りとどうしよもうないくらいの絶望だ。
「あ? 何が起こっているんだ?」
鬼瓦さんがこちらを不思議そうに見ている。
そして何故かそんな表情を浮かべている鬼瓦さんさえも憎くて殺したくてどうしようもない。
「ッ!?」
俺はその考えを捨てるために左手で頭を抑えるが、憎しみ怒り、殺意と言った負の感情がどんどん溢れてくる。
すぐさま重力魔法を解除する。
「ック……んん……魔法が解けた」
「何が起きているんだ?」
「……何を企んでいる?」
「逃げ……ロ」
早く俺の前からいなくなってくれ……じゃないと俺がどうにかなってしまいそうだ。
体は俺の意思に反して鬼瓦さんへと襲いかかった。
「リーダー!」
「くっ!? なんて強さだ! お前ら! テレビクルーを連れて逃げろ! 撮影なんて言ってる場合じゃねぇ! 何かやべぇ!」
「でも……」
「いいかろ逃げろ! リーダー命令だ!」
「殺ス! シネ! 人間共がぁ!」
憎い。目の前で撤退しようとしている人間さえも憎い。全員殺してやる。血祭りだ、蹂躙だ、皆殺しだ!
「こいつッ! 重力魔法を自分に!」
目の前の男が苦悶の表情を浮かべて剣を止めた。
「ハハッ! 皆殺しダァ! 血をもっと魅せてくれヨォ!」
「ったく。何がどうなってるんだ……さっきまでと別人じゃねぇか」
目の前の男を殺す。次は人類。あぁ、楽しみだなぁ。
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