第25話 作戦
「!? 何事でござるか!」
転移するとオタメガがびっくりしたのか周りを見渡している。
「転移魔法だよ。一応、俺の魔法って事になるかな」
「転移魔法……そのような便利な力を使えるとは素晴らしいですな」
「そうだよね〜。僕も最初は驚いちゃった」
「魔王様だからな。これくらいできて当然だ」
なんでフィオナがドヤってんだ。ってまあいいか。
「本題に入るんだけど、天下五剣の対応策としてダンジョンの増築をしようと思うんだけど、これ見てくれ」
俺はこのダンジョンを併合しますか? と言う画面をみんなに見せた。
「併合でござるか」
「ああ、今日フィオナと渋谷のダンジョンを攻略した時これが出たんだ。
多分渋谷のダンジョンを吸収してこのダンジョンを大きくしようって事なんだろうけど、それをした時渋谷のダンジョンにいる人や、このダンジョンにいる人はどうなると思う?」
モンスターは自動でポップするから少しの罪悪感で済むけど人はそう言うわけにはいかない。
「ん〜。難しいね〜。もし突然、ダンジョンが崩れたならダンジョン内部にいた人達は生き埋めになるだろうし、消えた場合は高い所にいる人は無事では済まないだろうね」
「拙者も同じ考えでござる。付け加えるならこのダンジョンにいる人でさえどうなるかは分からないでござる」
「そんなもの関係ありません! 我々は犠牲があって強くなっていくのです!」
「いやだから、犠牲は出さないようにするんだって……」
フィオナは相変わらず話を聞いていない。
「う〜ん。じゃあ私のチャンネルでダンジョンを吸収するってアナウンスすればいいんじゃないの?」
「いい手ではあるけど……どうやって?」
それができるならやりたいけど、あいなのチャンネルにどーも! 魔王でーす! なんて感じで登場するわけにもいかないし、どうするつもりなんだ?
「簡単だよ。リベンジって言ってもう一回このダンジョンに挑戦するんだよ。で、私と相対した時に太郎くんがその事を発表すればいいんだよ〜」
「おお! 普通に名案じゃん! 流石あいなだよ。やっぱりダンジョンの事はあいなに聞いた方がいいな!」
「えへへ、ありがとう!」
「うぅ、魔王様やはり私は切腹を……」
「そこまでは責任感しなくていいからね! ところで天下五剣の1人はいつ来る予定なんだ?」
「来週の土曜日だよ。攻略していく様子はテレビで放送されるみたいだよ」
「テレビ!?」
「うん。私のところに太郎くんが映った映像を使っていいか確認もされたし」
「マジかよ……なんでそんな大事になってんだよ……」
テレビってマジで? しかもあいなの映像を使うって事は特番みたいな感じで放送するって事だよな。
ネットでテレビ番組を調べてみると突撃! 魔王がいると噂の八王子ダンジョン! と書かれていた。
そして概要にはダンジョン攻略はライブで行われます。と記載されていた。
番組は18時から0時までの1番視聴率が稼げそうな時間になっていた。
「はぁ、なら早い方がいいな。あいな。配信は明日でも大丈夫か?」
「うん! 大丈夫だよ! 任せといて!」
「拙者は何をすれば良いでござるか!」
オタメガをみるとどう足掻いても誤魔化しきれない気がする。
雪風のコスプレイヤーって事にすればいけるか? んー。かなり怪しいぞ。
「バレる危険があるからオタメガは家に居てくれ」
「………」
すると見て分かるくらい落ち込んでいる。うぐぐ、何故だ。中身はオタメガなのに罪悪感がすごい。
「そうだ! 透明になれる薬あったろ! あれで透明になって影から俺達を守ってくれ!」
「かしこまったでござる! 拙者、陰に潜むものとして! 太郎殿の命を守りきるでござる!」
ふぅ、よかった。これでなんとかなりそうだ。
「フィオナはいつもの感じで頼むな」
「勿論です魔王様! お任せください!」
そんなこんなで俺達は明日に備えるのだった。
『やっほ〜、元気にしてた〜? みんなに愛をお届け、あいなだよ〜!』
配信を見ながら俺は魔王の座に座っていた。後ろにはフィオナと透明になったオタメガがいる。
コメント欄ではあいなを心配する声が多い。
『久しぶり!』『あいなちゃんは大丈夫だったの?』『怪我とかない?』
『みんな心配してくれてありがとう! 今日は事前の告知通り八王子ダンジョン、通称魔王城にリベンジするよ! なんでも天下五剣の人達が動き出すみたいだからそれよりも早く、魔王様の姿をみんなに見せたいしね!』
『やめた方がいいよ!』『俺、あいなちゃんが心配だよ!』『誰か一緒に着いてけよ!』
『ふふっ、みんな心配性だな〜! でも、大丈夫! 今回は私が勝ってみせるから!』
同説をみると最初から5万以上いた。そしてそれは時間が経つにつれて6万になった。このままいけば10万人以上が配信を見るんじゃないか?
『それじゃあ攻略開始〜』
その掛け声と共にあいなはダンジョンの中へ入ってきた。
一応手加減はせずに攻めるが、あいなはそれらを最も簡単に突破してきた。オーガとの戦闘も『蛮勇』さえなければ普通に勝てるのだと改めて認識した。
そしてボス部屋、つまり俺がいる部屋の前までやってきた。
俺はスマホをしまって足を組む。フィオナもそれに合わせて後ろで姿勢を直したようだ。
「さっ、魔王様と対面しよっか!」
そして扉が開いた。あいなは笑顔で入ってきた。どうやら今の俺の姿を笑っているようだ。
そしてその姿は配信には映らないだろう。何故なら、ドローンはあいなの後ろにいるからだ。
「ふむ。また来たのか、人間」
ロールプレイを始める。
「やぁ、また来たよ。今日こそその首を貰うから覚悟してね!」
「魔王様、ここは私が……」
フィオナが一歩前にでる。台本通りだ。
「まあ待て、せっかくここまで辿り着いたんだ。少し話でもしようじゃないか」
「へぇ、私に何か言うことでもあるのかな〜」
その言葉を聞いて俺は立ち上がる。そしてゆっくりと手を叩く。
その動作にあいなは身構えた。台本にない、アドリブだからだろう。でも許してくれると嬉しい。俺は演技派なのだ。
「まずはおめでとう。このダンジョンを登った感想はどうだった?」
「中々手強かったよ……でも今日は前よりオーガが弱かったね、何か問題でもあったの?」
「前回の様にあそこで倒れられても困るからな」
「ふ〜ん。私を相手に手加減したって言いたいの?」
「ああ、そうだ」
「カッチーン。少し不愉快だね……」
おいおい、今時カッチーンなんて言って怒るやついないだろ。
「だが、このままではお前の様な実力がない奴が間違ってこの部屋まで辿り着くかもしれんな。ふむ。ダンジョンを増築するか」
少し考える様な仕草を見せてそう呟いた。
「ダンジョンを増築!? そんな事できるの!?」
「増築というよりは吸収に近いがな。渋谷という場所にあるダンジョン。あそこは良かった。手始めにあのダンジョンを吸収するとするか」
「嘘……だよね?」
「本当だ。そうだな。今日の日付が変わる瞬間、その時に渋谷のダンジョンを吸収してやろう」
「なっ!? それなら中にいる人達はどうなるの!?」
「さあな」
「さあなって、どういう事!?」
「このダンジョンで死なれると後処理が面倒だから生かしてやっていたが、他のダンジョンで死ぬ奴らの事など知ったことではないということだ」
「なっ、酷い……」
「俺は魔王だからな。人が死ぬのが嫌ならその事を渋谷のダンジョンにいる奴らに教えてやる事だな」
俺はカメラを知らないふりをして話している。
「私1人でそんな事できるわけないでしょ!」
「仕方ない、それなら手伝ってやろう」
指をパチンと鳴らしながら転移魔法をあいなとドローンに発動する。
場所は渋谷のダンジョン入り口付近だ。
後はあいながなんとかしてくれるだろう。俺はそう思いながら椅子に座るのだった。
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