第26話 併合

「ふー。いい感じだった?」


 あいなを転移してから椅子に座り込む。


「はい! 魔王の威厳を感じられました。馬鹿な人間どももこれで理解しなければ救う価値もないでしょう!」


 んー、バイオレンス。


「威厳って……まあそう見えたんなら良かったよ」


「魔王モードの時、太郎殿は怖いでござるな」


「そうなの?」


 オタメガの姿は見えないけど、声のする方を見る。


「さようでごさる。なんと言えばいいか、後ろからオーラのような物が出ているんでござる」


「えっ、マジ?」


 俺は慌ててあいなの配信を見直すが特に何も出て居ない。


「何も出てないじゃん」


「? 太郎殿には見えないのでござるか?」


「えっ、オタメガには見えてるの?」


「ええ、バッチリと」


「フィオナにも?」


「はい! 当然です!」


「えー……」


 マジかよ。俺以外には見えてるの?


 そんな事を考えながら、ネットで魔王と検索すると早くも、渋谷ダンジョンのことが書かれていた。


 おっ、早速効果が出てきたようだ。


 他にもスレが立てられていて悲報、魔王様。渋谷ダンジョンを吸収できると書かれていた。


 それらを見ていると電話がかかってきた。あいなからだ。


『もしも〜し。配信終わったよ〜』


「あぁ、ありがとう。今から回収したんでいい?」


 転移魔法を使えばすぐに回収できる。


『ううん。それがちょっとこっちも動けなくなっちゃって……』


「……なにかあったのか?」


『大した事じゃないんだけど、ダンジョン対策委員から私の方に連絡があって詳しく話を聞きたいんだって』


 誰かに襲われたとかそんな話かと思っていたから良かった。


「そうなんだ」


『うん。だから今日はそっちには顔出せないと思う。それと私の方で渋谷と八王子のダンジョンを封鎖するようにお願いしてみるよ』


「何から何までありがとな」


「ふふっ、悪いと思うなら今度埋め合わせしてよね〜。じゃあ行ってくるね」


「ああ、必ず」


 あいなに感謝しつつ電話を切る。


「あいなはなんと言っていましたか?」


「国にダンジョンの閉鎖を呼びかけてくれるんだって」


「あいなの奴、よくやってくれていますね」


「本当に……助けられてばっかりだよ」


 それから俺とフィオナそしてオタメガは夜の0時がくるまでダンジョン内部で待つのだった。



「さっ、そろそろ時間だな」


 あれからあいなの呼びかけのお陰か、国が今日と明日はダンジョンに入る事を禁止した。

 しかし配信者達や、テレビは渋谷ダンジョンの近くに沢山、来ている。現に配信サイトでは、渋谷ダンジョンの様子を映しているライブ動画ばかりだ。


「俺にも何が起こるか分からないけど、2人はこの中に居ていいのか?」


 2人はダンジョンから出て待っていてくれてもいいと言ったのにそれを断ったのだ。


「魔王様がいる所に私ありですから!」


「拙者、陰に潜み太郎殿を守ると誓ったので……」


「分かった。なら行くぞ……ダンジョン併合!」


 そう叫ぶが何も起こらない。首を傾げたその瞬間異変が起きた。

 地面が揺れ始めたのだ。


「うおっ」


「魔王様、若葉! 私の近くに来てください!」


「ああ!」


「はい!」


 それもかなり揺れが強い。立っているのもやっとだ。

 するとフィオナは俺とオタメガの名前を呼んで近くに来たのを確認すると防御魔法の結界を張った。

 この魔法がある限り仮に天井が崩れても俺達に被害はないだろう。


「……揺れが治ったでござる」


 しばらく時間が経つと地面の揺れがなくなった。


「何も変わった様には感じませんが……」


 フィオナは変化に気づいていないようだ。


「いや、階層が増えている。渋谷の含めて14階だ。しかも渋谷の魔物もポップし始めた」


 管理権限の力で全てがわかってしまった。

 しかもボスだったキマイラが普通に5階に何体もポップしている。

 クイーンビーの時はそこまで思わなかったけど、キマイラが普通にダンジョンを闊歩しているのをみると迫力がある。


「ということは!?」


「成功したみたいだ」


 渋谷の様子を見るとダンジョンがなくなっていた。消える瞬間を見てみると魔物を倒した時の様に光になって消えている。

 そして辺りは大混乱だ。逆に八王子ダンジョンの方を見ると、急に地面からダンジョンの階層が増えたみたいになっている。


 幸い人は巻き込まれてないし、本当に良かった。


 そして今日はもう遅いので、俺達は解散するのだった。


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