第11話 クラスにて…
「うしっ、いい感じだな」
「そうですね! 魔王様! この勢いで人間どもを皆殺しに……ふっふっふっ、我らの道に敵はなしですね!」
「いや、皆殺しにしないからね……って聞いてねぇし」
あれから1ヶ月くらいの時があり、俺達は順風満帆な魔王ライフを送っていた。
最初は戸惑っていた俺だったが最近では楽しみながら冒険者達を追い返している。
勿論殺してはない。相手が帰ろうとしたら追わずにそのまま帰ってもらっている。
あとZPを使う事によってマップだけではなく、中継でダンジョン内の様子が分かるようになった。それとフィオナにも俺が見ている画面の共有ができるようになったので2人で今もダンジョンの様子を見ていたところだ。
他にもZPを使ってスキルなどをゲットしたが、それは使う機会があれば使いたいと思う。
「じゃあフィオナ、俺は帰るから。多分大丈夫だと思うけどもし危なくなったらすぐに俺を呼んでくれ」
「はっ! 魔王様は明日も普段の時間にお越しになされるのですか?」
「うん。学校が終わったらすぐにここにくるよ」
「分かりました! 魔王様がお越しになるまでの間、このフィオナが誠心誠意お守りします!」
「そこまではしなくていいよ。じゃあまた明日」
1ヶ月の時が経った事によって親が出張から帰ってきた。
それまでフィオナと一緒に暮らしていたが、親が帰ってからはそういう訳にもいかずフィオナにはダンジョンで生活してもらっている。
シャワーやベッド、トイレも用意したし、不満があればすぐ言ってくれと言っているし大丈夫だろう。
「はい! 魔王様もお気をつけください!」
フィオナの返事を聞いてからテレポートを使って俺は家に帰るのだった。
「本当なんですぞ! 昨日飲んだ薬で髪の毛が1センチ伸びたんでござる!」
次の日、昼休みに教室で昼食をとりながらオタメガとくだらない話をしていた。
「……ほんとかー? 違いがわからないぞ」
昨日までのオタメガと今日のオタメガの違いがわからない。
「ッチッチ……太郎殿もこれが分からないとは女の子にモテませんぞ」
「お前にだけは言われたくねぇよ!」
そんな話をしているとおそらく食堂に行ったであろう、桜木とギャルの友達が帰ってきた。
「それじゃあ拙者は帰還するでござる」
この前ギャルに文句を言われて以降オタメガはギャル恐怖症になってしまったのか、桜木の友達であるギャルが近くに来ると帰るようになってしまったのだ。
「お、おう」
オタメガがいなくなってすぐに桜木とギャルが話し始めた。
「てさかー、本当に行くの?」
「ん〜、リスナーのみんなも謎を暴いてきて欲しいって言ってるしね〜」
なんの話だ?
俺は本を取り出し読むふりをしながら聞き耳を立てる。
「でもそれって危なくなーい? 魔物が急に強くなってるんでしょ。魔王の噂もあるしやめといた方がいいって!」
「心配してくれてありがとっ! でも私は、大丈夫だから! ……田中くん、聞き耳なんて立てて私達の会話が気になるの〜?」
何故か聞き耳を立ててることがバレてしまった。
「い、いや。聞き耳なんて立ててないよ! 俺は本を読んでるだけだし!」
「それ逆じゃん。つーか、聞き耳立てるとかきもいんだけど」
ギャルに指摘された事に気づいて本を見ると確かに反対になっていた。
「こら、みーこ。酷い言葉使っちゃダメだよ〜。みーこがごめんね」
「いや、いいよ。桜木さんやみーこさんに気持ちの悪い事をしたのは事実だし」
「アンタにみーこと呼ばれる筋合いはねぇ!」
嘘だろ。みーこさんじゃなかったのか。
「ご、ごめん。みーこって名前だと思ってて……」
「そんな名前の奴がいる訳ないだろ!」
「はははっ、田中くんは面白い事言うね〜」
「は、ははは……」
「んで、なんで聞き耳なんてたててたわけ?」
苦笑いして誤魔化そうとしてるがダメだったようだ。
「その、今のってダンジョンの事だよね? ちょっと気になっちゃって……」
嘘なんて言ってもバレると思って本当のことを聞いてみる事にした。
「なになに! もしかして、田中くんも私のファンだったりするの〜」
うん。っていうか? いや詳しいことを聞かれたら答えられないしな。桜木がダンジョン配信している所とか見たことないし。
「ご、ごめん。ファンじゃないんだけど、最近ダンジョン攻略してるから……」
苦しくないよね。
「へー、アンタダンジョン攻略してるんだ。どこのダンジョン?」
「……八王子のダンジョンだね」
「八王子っていったら最近話題のダンジョンじゃん! あいなともその話しをしてたんだよ!」
意外とみーこさんは話しやすい人なのか。会話に混じってくれた。
「私も今日行ってみようと思ってるんだけど、なんか情報があったら教えて欲しいんだけどな〜」
「え? ダンジョンに来るの?」
「来るのってアンタの家じゃないんだからさ、何言ってんのよ」
あっ、しまった。最近ダンジョンに通いすぎて、第二の家みたいになってたから……これは失言だった。
「ご、ごめん。ダンジョンの情報だったよね。1階はコボルトとスライム。それからオークがいて2階にはゴブリンとクイーンビーが居て、ゴブリンの罠が大量に仕掛けているから気をつけて。それから3階にはオーガが居るからちゃんと装備を整えた方がいいかも……」
話題を変えたくて無理矢理ダンジョンの情報を話すと2人がぽかんとした顔で俺を見ていた。
「どうかした?」
「田中くんは八王子ダンジョンについて詳しいんだね〜。3階にオーガが居るなんて初耳だったよ」
え? 嘘じゃん。
「……ってなんかの情報で見たような気がしたなー」
「なんかの情報ってあいなに適当な情報与えるんじゃないし! それであいなが危険な身にあったらどう責任とんの!」
みーこがキレた。どうやら桜木とはかなり仲がいいようだ。
「本当ごめん! これからは気をつけるから!」
「みーこ言いすぎ。私が情報聞いたんだから大丈夫だよ。ありがとね〜」
「う、うん。でも八王子ダンジョンって結構危険らしいしやめといた方がいいんじゃない?」
桜木には来てほしくないし、それとなくかえってもらおう。
「アンタも行ってるんじゃん」
うぐぐ、みーこも厳しいことを言ってくる。
「いや、ほら、俺はいいけど、桜木さんはファンもいるだろうし……」
「心配してくれてありがとっ! でも大丈夫! 私つよかっこいいから!」
それ自分でいっちゃうんだ。と思いながら愛想笑いしているとチャイムが鳴った。
それをきっかけに自然な形で会話が終わるのだった。
今日桜木が来るってマジかよ……何が何でもボス部屋に辿り着かせないようにしないと……
俺はそう心に誓って授業を受けるのだった。
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