第10話 魔王の力

「ただいまー」


「おかえりなさいませ! 魔王様!」


 学校が終わると俺は急いで家に帰ってきた。

 途中オタメガから研究を手伝ってほしいと頼まれたが、風邪を移すといけないからと言って無理やり帰ってきた。


「魔王様、その袋はなんですか?」


「これは変装キットだよ。一応2人分買ってきたけど、どっちがいい?」


 買ってきたのは舞踏会で使われるような黒の仮面と赤の仮面だ。


「何故仮面を買ってきたのですか?」


「バレたら生活しずらくなるだろ? でもこれさえあれば、顔バレする心配もないし配信者がきても安心だ」


「配信者? というものはよく分かりませんが、分かりました! では私はこの赤い方でお願いします!」


「おっけー。じゃあ俺が黒い方ね。これからダンジョンに行こうと思ってるんだけどフィオナも来る?」


 本来ならあまりダンジョンには行きたくない。


 でも今日の授業中に管理権限の事を使っていると、気になる事が幾つか書いていたのでそれの確認をしておきたいのだ。


「勿論です!」


「じゃあ着替えて来るから少し待ってて」


「かしこまりました!」


 フィオナの元気な返事を聞いてから、自分の部屋に着替えをするために移動するのだった。

 


「おっし、じゃあ行くか」


 服をジャージに着替えて準備を終えた俺はリビングに戻ってきた。


「はい! ところで何故靴を持っているのですか?」


「ちょっと試してみたい事があってな。フィオナも靴を持ってきてくれ」


「はい? 分かりました」


 それからフィオナは玄関まで行きヒールを手で持ってきた。


「持ってきましたが、これからどうするのですか?」


「管理権限を見てたら拠点への帰還って魔法を使えるようになってるらしいんだけど、それを試してみたくてな。じゃあ行くぞ……帰還!」


 俺は声高らかにそう宣言した。すると体が謎の青い光に囲まれ、気がついたらダンジョンの4階、ボス部屋にいた。


「お、おぉ。これが魔法か……」


 何これクソ便利じゃん!? 魔王になってしまったことも悪いことばかりではないのかな?


「これは超高度なテレポート魔法!? 流石魔王様です! こんな難しい魔法が簡単に使えるなんて!」


 そしてフィオナは毎度のことだが、よいしょしてくれる。


「俺が凄いんじゃなくて魔王の魔力が凄いんだけどね」


「同じことですよ! それより試したいことというのはこの事だったのですか?」


「うん。これも試したかったことの一つなんだけど実は他にもあって……」


 心の中で管理権限と唱えて、魔物召喚と唱える。すると俺の目の前にガチャ画面のようなものが出てきた。

 一回につきZP5000と書かれている。

 現在俺が持っているZPはちょうど5000だ。

 何故こんなにポイントがあるのかというと昨日、最後に来た冒険者にかなり絶望を与えたからだろう。


「? どうしたのですか?」


「ちょっと待っててくれ」


 フィオナに返事をしながらのガチャの画面である化け物の閉じている口をフリックすると口が開きそこから卵が現れた。

 卵がカパッと開くと中から筋肉質な体の鬼が出てきた。

 名前を見るとオーガとなっている。


「オーガ召喚」


 そう呟くと筋骨隆々の2本の角が特徴的な魔物が現れた。


「お、オーガですか!? 何故オーガが召喚できているのですか!? オーガは強い魔物でこのダンジョンにいるはずがないのですが……」


 フィオナは驚いているようだ。


 それにしてもオーガって強いのか。運が良かったな。


「ガチャで引いたから?」


「が、ガチャ?」


「えーっと、管理権限の能力で魔物を増やすことができるみたいなんだ。このオーガはその力で増やしたものなんだ。だから今、このダンジョンにはゴブリン、スライム、コボルト、オーク、クイーンビー、オーガがいることになるな」


 マップを表示してみる昨日より青の数が多くなっていた。おそらくオーガとボスじゃなくなったクイーンビーが増えたからだろう。


「魔王様の力はやはり凄まじいですね」


 フィオナは恐れを抱いている様子でそう言った。


 俺もフィオナの意見に賛成だ。本当に凄まじいと思う。ネットに調べた情報によるとダンジョンのモンスターの種類が簡単に増える事はないらしいからな。


 そのせいかマップを見ると赤色が3階に入ってすぐに引き返している。

 今、3階にいるのはオーガとクイーンビーなのでそこで勝てなくて帰っているのだろう。


「ちなみにだけどオーガってどれくらいの強さなの?」


「んー。私からすれば強いとはいえ大したことありませんが、現代の人間からしてみれば災害のようなものだと思います」


 ……やらかしてしまったかもしれない。


 魔王がいるかもと噂されているダンジョンのモンスターが急に強くなれば皆はどう思うのだろうか?


「よし、じゃあ他にも試したいことあるしそっちをしてみるか〜」


 俺は考えるのが怖くなり現実逃避をするのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る