ルードと氷柱

なぜかとてつもなく、氷柱を目にしたくなった。それが今の行動のきっかけ。

「冬の静まり返った山の中で氷の柱なんて見たってさ。」

ルードはそんな人間である。

自然が好きなわけでも、氷が好きなわけでもない。ただ、今、そこに行くと、何かが変わる気がしていた。理由など無い。無性に行ったほうがいいような気がして、駆り立てられた。

山を超えて、東に向かう。

なんとなく。なんとなくである。

(きっと、この信号を、左に曲がれば行ける?)

そして、公共の駐車場に車を止めて、其の辺の地図の看板を見る。

「あった。ここだ。」

目的地を見つけると共に、気になる文字を見つけた。山の名前。

「やっぱり。そうか。。。」

「そんな気がする。」

「辿り着いたら、分かるだろう。きっと。」

ルードは、目的地の氷柱を目指した。

ただただ、山の合間の道をひた走る。

人間の住む場所と言うよりは、鹿や獣の住む場所。と、言う方が正しい気がする。

人間の臭いより、自然の動物の生息地を感じさせる場所。それを、奥へ奥へと突き進む。

そして、氷柱の看板を見つけ、駐車場に止める。観光地だと言うのに、人っ子一人居ない。そんな場所を1人でトボトボと歩く。

奥へ奥へと進むと、吊り橋が目の前に現れた。その奥に、流れる水が凍った、氷柱が見える。そして、それを見に来た親子連れ。

一組、二組。そして、ルード。

わざわざ見に来たはずの氷柱をぐるりと歩き回り、ルードは何か物足りなさを感じていた。

(これを見に来たのではない様な気がする。。。)

氷柱を一通り確認し、その場を後にする。

来た道をトボトボと歩き、駐車場を目の前に、3人の女性とすれ違う。

「そう。あれよ。あの山よ。」

「あの山がねぇ〜。」

女性たちが話題にし、顔を向ける先に、

とりわけ目立つ山が映る。

そこだけ、草木が生えていないのである。

山々の連なる中に、他と異なる山。

(今日の目的は、きっと、こっち。)

(たぶん。こっちだな。。。)

ルードの目的地が追加された。

「もしかしたら。。。って、思ったら、

やっぱり目的は、こっちだった。」

「私に何のようだろう。。。」

「行ったら分かるだろう。きっと、」

目に映る山。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る