「人が好き」なライと、「人が苦手」なルード

「ルード。ちょっと悪いけど、

 乗せてってくれないか?」

「私は方向音痴で、とてもじゃないけど着けない。あなたは良く道を知っているから、頼むよ。」

どこをどうしてか?色んな人に出逢っては、知り合いを増やしていくライ。

山の麓に移住してきた方の家に行きたいらしいが、辿り着ける気がしないので、行きたいと言う。その言葉に、ルードとは、少しの躊躇いと諦めを覚えた。ライは人好きでぐいぐい行くけれど、ルードには、その勢いが苦手で、そして、ライの方向音痴は、前回運転をした時に、良く分かっていた。まるで別の場所に行くかの様な全然違う方向の道を行き、そして、戻る。

「あの。。。倍の道を走ったんじゃないんですか。。。」

小言のように伝えた言葉に、ライは

「しかたがないじゃないか。」自信満々に答える。

「私は方向音痴なんだ。」

「だからあなたに運転を任したんじゃないか。」

「それにしても、遠回りすぎやしません?」

省エネで生きたいルードは、時間とガソリンとルードの気力の消耗に、やや不満を吐き出していた。

「にしたって。。。」

そんなルードにライはお構い無しで、ご機嫌。

「やぁ~。やぁ~。奥さん。お会いしたかったです。旦那さんには、ちょくちょく私の家の方には来て頂いていますけれど。」

「こうしてお伺いしないと、奥さんにはなかなかお会い出来なくて。」

「ルード。こちらの奥さんは、ヒーラーで、会うと僕は元気になるんですよ。」

ライはご機嫌だった。

都会から、わざわざ山の中を気に入って、引っ越されてきたと言うご夫妻。人里より更に奥まり、足を踏み入れる人の数はぐっと絞られる。そんな場所。


昔は、ただの山だった。

きっと、木々が鬱蒼と茂る雑木林。

自然を愛する人達が、人混みを離れて山に移り住み、山からすると、人がなかなか足を踏み入れなかった場所が、人の香りを纏いだす空間に様変わりしていく。

悪いとは言わない。ただ、今まであった姿が、ガラリと変わった一風景を見てきた。

それだけ。

ライは、陽気に、奥さんが用意した料理に舌鼓。ご機嫌でビールを飲み、ほろ酔い状態。

「ねぇ。ルード。大丈夫?」

奥さんは、だらしなく崩れかけた座り方をしているルードに声を掛ける。

「あっ。はい。大丈夫です。」

「疲れたでしょ?」

「あっ。はい。少し。」

「ごめんね。私、ライが苦手なのよ。」

「今度来たくなったら、あなただけ来てね。」

「彼と一緒にいると、疲れるでしょ?」

「彼、若い人からエネルギーを吸収して、元気になる、エネルギーバンパイアーよ。」

奥さんの言葉を聞き、ライがさっき言葉にしていた「会うと僕は元気になるんですよ。」の言葉が、脳裏を駆け巡った。

まともに座れず、崩れ落ちるように座るだらしがない上半身を起こし、奥さんの言葉が過ぎる。「エネルギーを吸収して、元気になる、エネルギーバンパイアー。」

元気になる人。だらしのない自分。

色んな人に出会って行くライと。

人を避けるルード。

ライを、エネルギーバンパイアと言葉にする奥さん。

ルードは思わずハッとし、

「ライ!帰るよ!もうこんな長い時間滞在しちゃった。ささっ。準備して。」

ライを煽るように声を掛け、ビールの缶を片手にご夫妻のお家を後にする。


奥さんの言葉に、ほんの少し、自分を知ったルード。

「エネルギーバンパイア?」

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