薄れゆく寂しさ
関係が始まった日から、凛は楓から猛アタックを受けていた。
迷惑な訳ではなかったが、まだ上手く距離感を掴めない凛だった。
「ねぇ、凛の好きな物は?食べ物でも何でもいいよ!」
「え、えと…ぬいぐるみ…かな…」
「あはっ、可愛いね!何のぬいぐるみが好きなの?」
「…イルカがお気に入り」
「へぇ!じゃあ明日休みだし、水族館行こうよ!」
「…急だね」
「善は急げ、だよ!」
何が善なんだろう…と考えてる凛をおいて、話はとんとん拍子で進み…
「じゃあ、明日、水族館の近くの駅で待ち合わせしよっ」
「う、うん…」
次の日、二人は待ち合わせを決めた駅で合流した。
「ご、ごめんね、待った?服が決まらなくて…」
「待ってないよ~!それに…可愛いね!!」
服に迷ったと言った凛の格好は…俗に言うゴスロリだった。
「うんうん!似合ってるね~!私ももうちょっとお洒落してくればよかったかなぁ~」
そう言う楓はかなりラフな格好。両極端と言えようか。
「じゃ、水族館行こっか!」
「そうだね」
水族館に着いた二人。
「イルカショーは…1時間後かぁ。何か食べる?」
「軽くなら…」
お店に入り、そこまでお腹も空いてなかった二人はデザートを頼むことに。
チーズケーキをもくもくと食べる凜に突然…
「はい、あーん♪」
「え!?」
白玉ぜんざいをすくって凛の口に向かって差し出す楓。
「あれ?苦手だった?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「ならいいじゃん~♪」
思わず、周りの目を気にしつつ…ぱくっと楓のスプーンを口に含む凛だった。
「美味しい?」
「…味、わかんないかも」
「あはは!」
その後、イルカショーや珍しい生き物を見たりして、水族館を回った。
そして日が傾きかけた頃…
「…そろそろ帰ろっか」
今日は色々あった。寂しさなんて感じてる暇もなく。むしろ、この時間が終わってしまうのが…と凜は思った時。
「はいっ!」
小さな紙袋を渡してくる楓。
「…開けていい?」
「もちろん!」
中身は、小さなイルカのストラップだった。
「あ…可愛い」
「気に入ってくれたかな?」
「うん。ありがとう…」
「そしてなんと」
「?」
バッグをがさごそした楓は…凜に渡したのと同じストラップを取り出した。
「お揃い!」
「…!」
突然の事に声が出なくなる凛。代わりに、久しく感じてなかった何かが心に宿った。この気持ちは何だろう…嬉しい…?
「さぁ帰ろ!」
「そ、そうだね」
そして駅で。
「あー、電車逆方向かー。ま、仕方ないか~」
「あの…今日はありがとう」
「また遊ぼうねー!」
電車に乗り込み、手を振ってくる楓に、小さく返す凛。
帰宅した凛は自室にて、じーっと貰ったストラップを眺めていた。
…お揃い…。
早速、ストラップをスマホに着けて、抱いて寝た。
…その日の夜は、寂しさを感じなかった。
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