第3話 調理実習でクッキー作り
◯
「それじゃあ、提出してもらったメニューをそれぞれ作ってください。」
先生が言うのと同時に、みんなが一斉に作業に取り掛かる。
「じゃあつくるか。」
「そうだな。」
「なぁ、今日ってなんでクッキーなの。」
同じ班の
「あー……とりあえず色々あるけど……」
「「あるけど?」」
「…お前ら料理苦手って言ってなかったっけ?」
「「………」」
「一番の理由は作りやすいからだな。包丁使わないし。」
「流石に包丁は使えるぞ?俺等。」
渡が若干苦笑気味に答える。
「……」
「まぁ、そこの心配をしてるわけじゃないんだが…クッキーだと授業の合間に食べられるぞ?」
「!いいねぇ。何味作る?」
「そこはお好みで。」
「俺チョコ味がいいな。」
「じゃあやるか。…って言いたいんだけど、」
ちらっと横を見ると、包丁の話からずっと黙っている、というか固まっている杉原に目を向ける。
「杉原、今回は包丁使わないから、大丈夫なんじゃないか?」
「が、頑張ります…」
「チーン」
待ち望んでいた音が俺たちのもとでなる。
「できた?できてる?」
「ちょっと待てって。」
目がキラキラしている3人をなだめつつ蓋を開ける。
「「「「おぉー!!!」」」」
「でき…てる…できてるよな!?」
「長かった…ここまで、長かった…」
なんかテンションがおかしいやつがいる気がするが、触れないほうがいいだろう。色々あったのだ。色々。
「で、みんなそれぞれ何味にしたの?俺はチョコ味にしたけど。」
実が3人に問いかける。今回、全員がそれぞれ味やトッピングを選び、他のやつにそれがわからない様に作ったのだ。焼くときに並べたから俺は知ってるけど。
「僕はプレーン!1番好きなんだ。簡単そうだったし!あとからチョコペンでなにか書こうかなって。」
「おぉーいいねぇ。渡は?」
「俺は抹茶だな。トッピングは諦めを感じた。」
「あはは、なるほどねぇ。明人は?」
「俺はチョコチップ。」
「チョコチップ!その手があったか…いいなぁ…」
「やっぱ明人のやつ1番うまそうだよな。なんか、安定感がある。」
杉原や渡が俺のクッキーを羨ましそうに見ている。褒めてくれるのは嬉しい。だがしかし。
「あげないからな、何を言われても。」
「バレたか。でも、うまそうなのはほんとだからな?」
やっぱりか。いたずらがバレたような顔をしている。あげてもいいが、俺だって少しは食べたいのだ。それに、あげる約束もしたし。今回はなかなかにいい出来だったから。…ひめ、喜ぶかな。
……なんか、実がめっちゃにやにやしてるんだが。昨日勉強し過ぎたのか…?
「今日お前めっちゃにやにやしてないか?勉強し過ぎか?」
「違う。というか、お前俺のことなんだと思ってるんだ?」
真顔で否定された。解せぬ。
「なぁ杉原、チョコペンでなにか書くんだろ?なに書くんだ?」
「えっとね…」
クッキーの完成はまだまだ先になりそうだ。
完成されたクッキーを見てふわりと微笑んでいる明人の表情は、実以外の誰にも見られることはなかった。
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