第2話 親友が無自覚な件について。

みのる視点

「おはよ、明人あきと。」

「おはよ。今日の課題って数学だけだったよな?」

「……化学のワーク提出、しかも朝に回収。」

「……答え持ってる?」

 無言で回答集を差し出す。無言で自分の席、といっても隣なんだが、に座りワークの提出ページ数を確認してる。あぁ、これは答え写すか悩んでるな。…おっ自力でやるらしい。まぁ数ページしかなかったし、まだ時間あるから明人なら間に合うだろうけど。

 俺、三浦みうらみのるはこいつとは小学校からの長い付き合いである。いわゆる親友というやつだ。ただし喧嘩は多かった。めちゃくちゃ多かったが。ちなみに俺はこういうときは迷わず答え写す派だ。しかし、最近、先生によっては写したことがバレると課題を追加で出す先生がいるのだ。俺はまだバレたことないけどね。バレないように数問は自力で解いてるからね。

「なぁ、今日の調理実習、何作るか決めたか?じゃんけんに勝ったのお前だったよな?」

 今日の調理実習は4人1班で各々好きなものを作ることになっていた。ちなみに、俺と明人は同じ班だ。はじめは班の全員でメニューを決めようとしたのだ。しかし決まらなかった。その結果、厳正なるじゃんけんが行われ、勝った明人に材料を買ってくる(後で班員で割り勘する)ことを条件にメニュー決定権が与えられた。

「あぁ、クッキーにしようと思って。」

「ふーん、いいじゃん。でも、なんでクッキー?」

「作りやすい、授業の合間に間食にしやすい、持ち帰りやすい、…とか?」

「なるほど。色々考えてんだなぁ。」

「まぁな。」

 そういうと明人はワークに目線を戻した。若干だが、話しかけんなというオーラが見える気がする。まぁ、いいけど。

 しかし、クッキーか。妹に持って帰ったら喜びそうだな…そういえば、1年の陽愛奈ひめなちゃん、確か好物クッキーだったっけ…

「ふーん」

「なんだよ、にやにやして。他のやつが見たら驚くぞ、その表情。」

「えっ、それはひどくない?いくらなんでもひどくない?なぁ、」

「……」

 無視はつらいんだが…

 とにかく、明人がなぜクッキーを選んだのかわかった気がした。こいつの性格からして、多分無自覚なんだろうが……俺の目をごまかせると思うなよ、明人。そもそも、陽愛奈ちゃんが明人のことを好きなのはまわり的にはバレバレだけど、お前も大概だからな。まさかの本人無自覚っていうなんとも言えない状況だけどな!

 この心の叫びが聞こえたのか、明人はワークから顔を上げた。

「終わった。答えありがと。」

 そう言うと同時に、先生が化学のワークを回収するために教室に入ってきた。


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