見上げた先にいる君へ

蒼井 蓮月

第1話 私が恋した人は

 わたしには、恋をしている人がいる。

「ひめー?早く行くぞ。」

「う、うん。」

 私が恋をしている相手は、ずっと、ずーっと昔から知っている、幼馴染だ。


陽愛奈ひめな視点

 秋になり、少し冷えてきた道のりを学校まで二人で歩く。私、小鳥遊たかなし陽愛奈ひめなは今年から高校一年生。150cmという身長のせいで中学生、更に童顔も相まって最悪の場合小学生に見られがちだが、れっきとした高校生である。

 いや、中学生はわかるんだよ、まだ、まだね?去年まで中学生だったし。でもさ、高校生を小学生と見間違えるってなくない?ちょっとひどいと思わない?テーマパークのチケット売り場で、「中…小学生の方ですか?」って聞かれたときの気まずさ!「こ、高校生です。」って言ったときの向こうの人のえっっていう顔!一緒に行った友達もこらえきれずに笑ってたし!流石にこの年で小学生に間違われたことはその一回しかないけどね!

「ひめ?なにか悩み事でもあるのか?」

 見上げた先には見慣れた顔がある。その目はしっかりと私を見ていて、ちょっとどきっとする。

「あっ、えっと、特にないよ。なんで?」

「なんか難しい顔してたから。」

「あー…昨日課題やるの忘れてて、寝る前に思い出してやったから寝不足なんだよねー」

「ふーん」

 そう言うと、隣を歩いている私の幼馴染、高梨たかなし明人あきとは前を向いた。彼は私より一つ年上の高校2年生で、私のことをひめと呼ぶ。小さい頃からそう呼ばれているから違和感はないんだけど、「姫」に聞こえるので若干恥ずかしい。でも、本人に直す気はないらしい。ちなみに、私は彼のことを明人にぃと呼んでいる。これも小さい頃からの名残だ。いつか彼に陽愛奈と呼んでもらうのが私の目標だったりする。

「なぁ、」

「はっはい!何でしょうか!」

「なぜ敬語…まぁいいや。今日調理実習あるんだけどさ、」

「えっいいなぁ、何作るの?」

「クッキー。」

「美味しそう!いいなぁ、明人にぃのクッキー。絶対美味しいでしょ。料理上手なんだから。」

「作った分持って帰れるんだけどいるか?」

「ぜひ!ぜひください!」

「ん、わかった。じゃあ、また後でな。」

「うん。」

 いつの間にか学校についていたらしい。下駄箱の場所が学年によって違うので、ここで彼とはお別れだ。いつもはちょっと名残惜しいけれど、今日の私は一味違った。なぜならば!

「明人にぃのクッキー楽しみだなぁ…間違いなく美味しいよなぁ。」

 私の頭の中はこのことでいっぱいだった。

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