どうしてそうなりますの?
カァンッ!!
「打ちました!!右中間!!大きな打球になった!!平柳の打球が伸びていく!!……入りましたー!!先週に続いて、平柳に2本目の先頭打者ホームランが飛び出しました!!今シーズン、第2号!シャーロットが先制点を奪います!!」
「ナイス、平柳君。カットボール?」
「カットっす、カットっす!新井さんもガツンといっちゃって下さいよ!おケツいただき!」
「ああんっ!」
グワシッ!!
「3球目を打ちました!!大きな打球になっている!!センター方向!まだ打球は落ちてこない!!センターバック、センターバック!!入りました!!405フィートのフェンスも何のその!バーンズに5号2ランホームランが飛び出しましたっ!」
4回。
カァンッ!
「これも大きい打球になりました!ライトは諦めました!中段までいきました!アンドリュースにも1発!!3号ソロホームランです!!」
スカンッ!!
「ロンギーの当たりも高く上がったぞ!!レフトセンターが追う、レフトセンターが追う!!その………上でしたー!!ロングフォレストにも久々のホームランが飛び出しましたっ!!」
少し反撃にあった後。
ガシュンッ!
「いったー!!左中間ー!!外野は1歩も動きません!!ここまでいきましたーっ!!クリスタンテにもホームラン!!6号2ランです!すぐに取り返します!!」
シャーロットはこの試合、5本目のホームラン。
向こうのピッチャーが悪いというわけではないと思うのだが、少ないチャンスボールをしっかりとカチ上げるようにして、残さずスタンドにブチ込んでいるというそんな印象だった。
カァンッ!!
「捉えたー!!ヒックスもいきましたぁー!!」
6本目。
カキッ!!
「高く上がりました。レフトへ上がっています。………下がっていく、下がっていく!ポール際!!………どうだ?……入っています。入っています!!ブラッドリーにもホームランです!なんと、シャーロットはこの試合7本目のホームランで12点目!もう手が付けられません!」
ヤバ。すごすぎ。
あとホームラン打ってないのは、わたくしと9番のキャンプ場の坊やだけじゃありませんの。
「ラインナイン!セカンドベースマン、ナンバー、シックス!ザァム~!」
カンッ!!
おっ、きれいなセンター前ヒット!
というところから、いかにも守備に自信がありそうな色黒のセンターが打球に突っ込んできた。
これ以上、好きにさせるか!という気持ちがあったのだろうか。低いライナーに対して、果敢にダイビング。
打球はそのグラブの僅か先に弾み、センター後方へと転がった。
シャーロットファンの歓声とボルチモアのファンのため息が入り混じる。
センターは立ち上がるが、追いかける姿勢はなし。
ライトの選手がフェンスに跳ね返った打球を必死に追う。チーム1の俊足を誇るザムは、ヘルメットを振り落としながら2塁を蹴った。
ようやくボールに追い付き、カットマンへ。コーチおじさんが腕を回す。ザムは迷わず3塁を蹴ってホームへ突入。
ワンバウンドでボールが返って来る。それを捕球したキャッチャーがタッチにいく。
ザムが左手をホームベースのギリギリを狙って伸ばしながら、体を逃がした。
ホームベースに手が伸び、キャッチャーの一か八かのタッチは、ザムの背中のすぐ上を空振りした格好になった。
「セーフ!セーフ!!」
ゴロン、ゴロンとザムが勢いよく転がりながらセーフのジャッジ。ベンチの中にいた全員が万歳をしながら、土まみれのザム君を迎え入れる。
全力疾走でダイヤモンド1週ですから、バテバテのザム君にみんなで群がって喜びを分かち合う。
「はい、ザムちゃん」
俺が紙コップに注いだドリンクを渡すと、ザムはそれを受け取り、喉を鳴らしながら一気飲み。
それを見たチームメイト達は………。
「「フォー!!!」」
などと、面白がる声援。
とにもかくにも、あとホームランを打っていないのはわたくしだけということになったわけだ。
「ヘイ、アライ!」
ランニングホームランの興奮冷めやらぬ中、ネクストに向かおうとすると、上機嫌の打撃コーチが俺の側までやって来たのだった。
「いいか?あのライトの後方を見てみろ、あそこはこのスタジアムで1番ホームランが出やすいところだぞ。あのエリアを狙っていくんだ!」
と、アドバイスを受けたら、聞いていたチームメイト達は大爆笑。
君が打てばメジャー記録だぞと、俺はからかわれるようにしながらグラウンドへと出ていったのだった。
カンッ!
バシッ!
「アウト!」
平柳君はショートゴロに倒れ、ランナーなしでわたくし。
狙うはライト後方のラッキーゾーン。
打撃コーチがヘラヘラしながら教えてくれたその場所にお望み通り打ってやろうじゃないのと、そんな気持ちだ。
先発野手全員ホームランという記録を俺のひと振りで達成してやろうじゃないのと、俺は狙っていった。
イメージは外よりの高めのボールを上手く叩いて角度を出していく作戦だったのだが、打ったのは低め。
それでも、文句無しのカチ合わせ方。自然にバット投げが出るくらいの、理想的な捉え方だった。
打球が右中間。まさにそのラッキーゾーンに向かってグーンと伸びていく。
ライトの選手が一直線に下がっていく。
まだ打球は伸びる。まだ打球は行く。スタンドに向かって。
ややスライスしながらのその打球がオーバーフェンスした瞬間、もうここしかないタイミングで出した黄色いグローブの中に打球は収まっていた。
見事すぎるホームランキャッチである。
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