花言葉
にーじゅ。
1通の願い
「___✘✘✘で。」
「__✘✘いで。」
_______。
「忘れないで。」
新藤えりかは今年、高校生になったばかりだった。
二重でぱっちりとした目。
長いまつ毛、すっとした小鼻に桜色の唇。
整っているがその顔は”近寄りがたい”と
周りから人を遠ざけていった。
孤独。
ずっと1人だった。
父を幼い頃に亡くしシングルマザーとして2人で支え合って生きてきた。
そんな2人に神はさらなる試練を与えた。
強盗殺傷事件____。
真夜中、知らない男が家に入ってきて
部屋中を荒らし、お金をとり
挙句に母と私の”記憶"を奪っていった
私は一命をとりとめたが、抵抗したときに頭に強い衝撃が与えられたため、いわゆる記憶喪失になってしまったのだ。
母と過ごしてきたときのことも、友達??がいたのかは分からないけど全部覚えていなかった。
私がこれ以上ショックを受けないようにと、
入院中ひっそりと行われた母の葬儀が終わった後も1回も涙を流さなかった。
そんな厄介者の私を受け入れてくれたのは
母の妹である
けいこねーちゃん、と親しげに呼んでいた…
らしい。
「行ってきます。」
「あ、行ってらっしゃあい!!」
元気な声を背中に私はドアを開けた。
私の人生ってずっとこうなのかな。
「あ、お手紙です」
家を出たタイミングで宅急便の人が手紙をポストに入れようとしていた。
私がタイミングよく出たので手渡しで渡されたのだろう、けいこさんのかな??
「新藤えりかさんへ」
…私に??
誰がいるだろう、私に手紙を書く人は?
記憶喪失になる前に繋がっていた人はだろうか
でも、なぜ今頃になって手紙を出したんだ??
つまらない1日に変化があって少しワクワクしていた私は、これから起こる長い物語の始まりであることに気づくわけがなかった。
教室に入って、誰にも挨拶しないまま自分の席に座る。私は、あの事件からけいこさんに引き取ってもらうために、元の住んでた場所からうんと離れたこの街に引っ越してきた。
だから、私の過去を知る者などいない。
だとしたら私は周りからどう思われてるのだろう。よく思われては…いないな。
私は悲しくなる思考を振り払い手紙を開いた。
__________
えりかへ
事件から、何も連絡してあげれなくてごめん。
なんて声かけていいか分からなくて。
でもえりかのこと考えなかった日なんてないよ
記憶喪失になったってけいこおばさんから聞きました。大変だったね…。
でも私達は、絶対また前みたいな親友に戻れるから!! 私が保証します^^
スマホのアドレスとか全部変えちゃったから、けいこおばさんから住所聞いて手紙を出しました。
えりかが落ち着いた日でいいから、また会おう
紫苑の話もそのときにします。
____________
手紙の裏を見て、差出人は沢井穂だと知る
多分女の子だろう。
手紙の裏に『気軽に連絡してね^^』という文字と一緒に連絡先が書いてある。
紫苑…??もう一人の友達だろうか?
連絡…してみるか。
スマホを取り出し連絡先を入力してみる。
ここ数ヶ月、けいこさん以外誰とも話していないのだ。いくらスマホでとはいえ、なんて送ればいいのかわからない。
家に帰ってけいこさんに聞いてみよう。
いつもは長く憂鬱な学校が、今日はそわそわして早く終わった気がした。
「ただいまー、」
バタバタ
足音がしたと思えば、ドアからにこっと可愛らしい笑顔を向けたけいこさんがでてくる。
「おかえり!!学校どうだった??」
質問を無視して鞄を開け、手紙を差し出す。
けいこさんはわざとらしく首をかしげながら手紙を受け取り、かと思えば遠くを見るような、まるで大昔を思い出す顔をして真剣に手紙を読んでいた。
「穂ちゃんはね、えりかが仲良かった友達なのよ。同じテニス部にも所属しててねぇ」
私、テニス部に入ってたんだ…と初めての情報に感嘆の声が出る。
「そっかぁ。もう随分会ってないねえ。元気にやってるみたいで何よりだねえ。」
「穂ちゃんってどんな子なの??てか紫苑ってだあれ??」
「紫苑」というワードをだしたとき、けいこさんの顔が一瞬こわばったのを私は見逃さなかった。
そしてこの手紙を読んだあのときから、なぜか心がざわざわする。
まるで心の中に閉じ込められている何かが
「開けて!!」って叫んでるようだ。
知りたい。記憶喪失になる前のこと
変わりたい__。
「けいこさん私、穂さんに会いに行きたいです。」
けいこさんの顔から笑顔が消えた
花言葉 にーじゅ。 @nono71
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