【第45話】どうして警察がいるんですか?
翌朝の学校には、いつもと違う、不穏な空気が流れていた。
1時間目の授業に、現代国語の先生が20分も遅れてきたのだ。
先生が20分も遅れてくるなんて、今までになかったことだ。
理由は職員会議が長引いたから、ということで、他のクラスも同様に授業開始が遅れたらしい。
怪しいのはそれだけではない。
先生からは、「今日は裏門を使用しないように」という、謎の注意があった。
しかし、2時間目のあとの休み時間の終了間際。
次は保健体育だから、いつもなら女子は別室に移っているころだが、今日はみんなそれどころではないようだ。
ざわついている教室に、早くも三太郎が不穏な空気の謎を解明して、戻ってきた。
「おいカイト! 裏門にパトカーがとまってるらしいぜ」
「パトカー? この中学に、警察が何の用なんだろう?」
「噂ではどうやら今日、阿久野が警察のお縄になるらしい」
「ええっ!?」
「昨日の夜、阿久野がこれまでにはたらいた悪事が、すべてネットに書き込まれていたらしいんだ」
「ネットに!? いったい誰が──」
そういいかけて、僕には見当がついた。
「どうやら、阿久野の共犯者らしいけど、たぶん仲間に裏切られたんだな。自業自得だ」
おそらく、あおいちゃんだ。
しかし、ネットに書き込みがあっただけで、警察が動くだろうか。
おそらく警察は書き込んだ人物を特定し、事実関係まで確認できたか、あるいは確認のために学校を訪ねてきたのだろう。
「そっか……。これで一件落着だね」
「そうだな。新菜にも教えてやったほうがいいな」
「その必要はないと思うよ。三太郎、うしろうしろ」
そこには、複雑な表情をした新菜がいた。
さもあらん。
仮にも一度は好きになった相手が、警察に捕まったのだから。
「新菜! 聞いてたのかよ!」
「………………」
さすがの新菜も、いつもの勢いを失って絶句している。
こんなとき、どんな言葉をかけたらいいのかわからないで戸惑っていると、琴音先生が現れた。
「ちょっと3人さん。なにコソコソ話してるの? もう休み時間は終わっていますよ」
「先生、あの……本当に阿久野先輩は警察に?」
僕がたずねると、琴音先生は目を丸くした。
「えっ!? もう知ってるのですか?」
「三太郎の情報なので、半信半疑だったけど……その様子だと、どうやら本当みたいですね」
「あら、しまった。先生に鎌をかけたんですか」
「すみません」
「まあ、いずれはみんなに知らされるでしょうから。……今朝早く、阿久野さんが学校に来たんです。『やったこと全部、ネットにバラされた。俺、どうしたらいい?』って、せっぱつまった様子で」
「先生はどう答えたんですか?」
「内容の真偽はともかく、未成年である阿久野さんのフルネームがネットに書き込まれているのは問題ですから、『警察に相談しましょう』っていいました。阿久野さんは最初、いやがりましたが……結局、警察に協力してもらって、ネットの書き込みは削除できました。でも、もうかなり拡散されてしまっているので、完全に消すことはできません」
「そうでしょうね。阿久野先輩はどうなったんですか?」
「今は校長室にいます。このあと、警察に補導されて、詳しく事情を聴かれることになるでしょう」
「じゃあ、少年院に?」
「まだ中学生ですし、さすがにそれはないと思いますが……わかりません。いずれにせよ転校することになるでしょうから、私たちが彼と会うことは、もう二度とないでしょうね」
「そうですか」
だが、彼に対して特に思い入れのない僕や三太郎とは違う反応をみせている人間が、1人だけいた。
「なんでだろ……? あんなクズ、未練ないのに」
新菜は、大粒の涙を流していた。
僕は新菜の手を取った。
「行こう!」
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この物語は毎日更新していき、
第50話でいったん完結する予定です。
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