【第35話】窮地から脱出できますか?
6人の男たちが、僕をのがすまいと素早く取り囲んだ。
どうやら、かなりケンカに慣れている連中らしい。
阿久野は少し離れたところで腕組みをして、高みの見物だ。
僕は助っ人の6人を観察した。
6人のうち、筋肉質の男は特に要注意だ。
一度つかまったら、二度と放してくれそうにない。
狡猾そうなキツネ顔の男も、何をしてくるかわからないから注意が必要だ。
やせ型で背の高い男と、中肉中背の3人は、この2人と比べたら、なんとなく危険性は低そうに思える。
幸いなことに、危険な2人は隣にならんでくれているので、僕は彼らに背中を見せないように、つまり筋肉質の男とキツネ顔の男が自分の正面にくるように立った。
6人がじりじりと円の半径を縮めてくる。
少しずつ間合いを詰めていって、タイミングを見計らって同時に飛びかかり、僕を取り押さえるつもりだ。
この6人は全員、間違いなくケンカ慣れしている。
それは彼らの異常なほどに慣れた連係動作や落ち着いた表情、そして何よりも、悪人特有の、情というものが
いっぽうの僕は、ケンカなんて一度もしたことがない。
もちろん格闘技を教わった経験もない。
だが、いつかボクシング漫画で見た主人公をまねて、僕は両腕をそれっぽく構えた。
すると正面にいた筋肉質の男がいった。
「ほう、いっちょまえにやるってか? ボクシングか?」
するとキツネ顔の男がフン、と鼻で笑う。
「ハッタリに決まってるよマッチョ。こいつがボクシングやってる人間に見えるか?」
「そうだなスネオ。だが、俺たちに囲まれても、ひるまずに抵抗しようとしているだけでも、たいした度胸だと思わねえか?」
もちろんニックネームだろうが、筋肉質の男はマッチョ、キツネ顔はスネオというらしい。
そのまんまだな。
「こいつ……今、ちょっと笑いやがったよ。気に入らねえ」
「いや、俺たちの怖さがわかってないだけだろう。ほんじゃ、いっちょ──」
マッチョがそういいかけたとき、僕はくるりと身をひるがえし、後方へ走った。
そして、背の高い男をめがけて猛ダッシュした。
大柄な男は動きが遅い。
そして手足が長いから、接近戦には弱いはず。
「なっ!?」
背の高い男が驚いて身構えようとする、そのわずかなスキを突いて、僕はするりと脇の下をくぐる。
なんとか男たちの輪の中から脱出することに成功した僕は、そのままダッシュでテニスコートの出口に向かった。
だが、そう簡単には逃げられなかった。
テニスコートの出口の扉が、南京錠で施錠されていたのだ。
「わははははっ! 甘いな、伊勢カイト!」
高笑いをしたのは、相変わらず離れたところで高みの見物を続けている阿久野だった。
振り向くと、6人の男たちが迫っていた。
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『テニスなんかにゃ興味ない!』を
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この物語は毎日更新していき、
第50話でいったん完結する予定です。
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