【第34話】僕の裸もアップされるんですか?

僕は阿久野晃司に指示されたとおり、学校に向かった。

時刻はすでに夕暮れどき。

部活を終え、家路を急ぐ生徒たちとすれ違いながら、奥へと進んでいく。


テニスコートは学校の敷地の一番奥。

校舎から最も遠い場所にある。


林を抜けて、しんと静まり返ったコートにたどり着く。

案の定というべきか、そこにいたのは阿久野先輩だけではなかった。


阿久野を中心として、まるで僕を迎撃するかのように、左右に3人ずつ、計7人の男が扇状に並んで、こちらを見てニヤニヤと笑っている。

彼らはゆっくりと歩を進め、やがて僕を取り囲んだ。


背が高い男、筋肉質の男、そして中肉中背の男が3人、小柄だが狡猾そうな男……。

阿久野が連れてきた6人の男たちは、いずれも見たことがない顔ぶれだった。


年齢的には中3ぐらいに見えるが、うちのテニス部員ではない。

おそらく他校の悪友だろう。


「伊勢カイト、遅かったな」


「その人たちは誰ですか?」


「助っ人だ」


「今日はテニスの勝負じゃないんですか?」


「うるせえ! テニスなんかどうでもいい! 俺はおまえを叩きのめせれば、それでいいんだよ!」


「そういうことですか。まあ、なんとなく、そんな予感はしていましたが」


「ほう。余裕かましてくれるな。俺たちにリンチされるとわかっていて、それでも約束どおりに来たっていうのか?」


「いえ……。まさか相手が7人もいるとは思っていませんでした」


「ほう、俺と1対1のケンカなら勝てるっていうのか? ムカつく野郎だぜ! テニスとケンカは違うんだぞ!」


そういって、阿久野先輩は険しい形相で僕をにらみつけた。


パシャッ。

突然、スマホのシャッター音とともに、フラッシュが光った。


「晃司お兄ちゃん、今の、いい顔だったよ!」


聞き覚えのある少女の声だ。

僕の背後から現れたのは……。


「じゃーん。こんばんは、カイト!」


「あおいちゃん!? どうしてここに!? あ……もしかしてグル?」


すると、阿久野先輩がフッと鼻で笑った。


「やっと気がついたようだな。その子も俺の仲間の1人ってわけだ」


「じゃあ、あおいちゃんは最初っから、僕の写真を撮る目的で近づいてきたの!?」


あおいちゃんは首を振った。


「違うよ。有明の森で出会ったのは偶然よ。あのときはセックスのこと、いろいろ教えてくれてありがと。そのあと晃司お兄ちゃんに話しかけられて、『あることに協力してくれたら10万円あげる』っていわれたの。10万円なんて大金を積まれたら、小学生は断れないでしょ。しかも写真を撮るだけの簡単な仕事だっていうし」


そういえば、有明の森では、ずっと誰かに尾行されているような気がしていた。

あれは阿久野先輩だったのだ。


僕とあおいちゃんが会話をしているようすを見て、利用できると考えたのだろう。

復讐のためにそこまでするとは、なんという執念深さだ。


「だったら、もうあおいちゃんの役目はもう終わったはずだ。こんなところにいないで、早く帰ったほうがいい。これからケンカが始まるんだ。危ないよ」


「ううん、カイトお兄ちゃん。今日もカメラマンを頼まれてるんだ。ね、晃司お兄ちゃん?」


「フフフッ。その通り。では伊勢カイト君。今日のスケジュールを教えてやろう。まず、7人でおまえを押さえつけて、裸にひんむく。次に、あおいがおまえの写真を撮る。ただの写真じゃない。下半身が元気になった状態の写真だ。どうせ童貞だろうから、あおいのパンチラでも見せてやれば、元気になるだろ」


「えっ、そんなの聞いてないよ、晃司お兄ちゃん! パンツなんて見せないよ私!」


「フフフッ。それぐらい協力しろ。写真を撮ったら、いよいよリンチだ。おまえをボコボコに痛めつけて、最後に腕を折ってやる。二度とテニスができないほど、バッキバキにな。以上だ! 今日の予定について、何か質問はあるか、伊勢カイト!?」


「つまり、またしてもリベンジポルノってわけですね。もしも僕が今日あったことを学校や警察に訴えたら、その写真をネットで公開する、と?」


「そうだ。元気な状態のヌード写真を学校のみんなや家族に見られたら、恥ずかしいだろうなあ。それがイヤだったら、今日これから起こることは誰にも内緒にしておくことだ」


「はなっからテニスで勝負するつもりはなかったんですね。だったら、いったいなんのためにこれを持ってこさせたんですか?」


僕は家から取ってきたラケットを見せた。


「フフフッ。おまえをここに誘ったとき、もしも『ラケットなんかいらない』と俺がいったら、リンチするのがモロバレだろ。さて、今日のスケジュールの説明は終わりだ。野郎ども! とりあえず、そいつを裸にむいてしまえ!」


阿久野先輩の号令で、6人の男たちはいっせいに僕に襲いかかってきた。


♪∽♪∝♪——————♪∽♪∝♪


『テニスなんかにゃ興味ない!』を

お読みいただいてありがとうございます。


この物語は毎日更新していき、

第50話でいったん完結する予定です。


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