【第33話】リベンジポルノって何ですか?
僕は自分の部屋でラケットを取り、電話をかけた。
試合に行く前に、琴音先生に少し聞いておきたいことがあったからだ。
ラケットを取りに帰ったのは、そのための時間稼ぎだ。
「カイトさん、何かあったんですか?」
「えっと……。ちょっと琴音先生に質問があるんです」
「わざわざ学校に電話してくるなんて、よっぽど大事なことですね」
「リベンジポルノについて、詳しく教えてほしいんです」
「……!? リベンジポルノの何を知りたいんですか?」
「そもそもリベンジポルノとはどういうものなのかとか、対策とか……ようするに全部です」
僕は阿久野が口にしたリベンジポルノについて詳しく知らない。
警察に捕まるようなドジは踏まない、とうそぶいていたが、その全体像がわかれば、もしかしたら彼の弱みを握れるかもしれない。
「……わかりました。いったい何があったのかは聞かないでおきましょう。そのほうがいいんですね?」
ふつうなら、「なぜそんなことを聞くんですか?」となるところだが、琴音先生は察しがいい。
「はい。ありがとうございます」
「では、説明しましょう。リベンジポルノは、性教育においても重要な項目だと、先生は考えています。リベンジポルノだけではありません。子どもたちが児童買春やJKビジネスなど、性にまつわる犯罪に巻き込まれることを未然に防ぐことは、性教育の大切な役割だと思います。カイトさんはSNSを使っていませんね?」
「はい。スマホもケータイも持っていないので」
「それなら、カイトさん自身はそうした犯罪に巻き込まれる可能性は低いですね。リベンジポルノとは、性的な画像や動画を、本人の同意を得ないでSNSなどに公開して拡散させる行為のことです。確か2013年──だったと思いますが、ストーカーが女子高生を殺害した事件をきっかけにして社会問題化されました。その翌年には、リベンジポルノ被害防止法が施行され、性的な画像を公表した人には懲役や罰金が科されるようになりました」
「その法律ができてから、リベンジポルノの被害にあう人は減ったんですか?」
「性的な画像に関する相談件数は増え続けているそうです」
「えっ!?」
「ちゃんとした法律がなかったせいで、相談するのを
「なるほど、そういうことですか」
「もしかしたら、実際の被害件数は減っているのかもしれませんが、法律ができる前は被害を届け出る人が少なかったでしょうから、比較はできませんね。ちなみに加害者──すなわち犯人は交際相手や元交際相手が6割以上ですから、やはり恋愛関係に起因するものが多いようです」
「もしも、元恋人とかに裸の写真をネットで公開されてしまったら、どうすればいいんですか?」
「インターネットで公表されてしまった画像などは、プロバイダに削除要請をすることができますが、まずは警察に相談することが大切です。性犯罪被害相談電話にかけるのがいいでしょう」
「でも、警察に相談するのって、若い女性にとってはハードルが高くないですか? 警官って男性が多いイメージだし、なんだか大ゴトになりそうだし」
「警察に相談しにくい場合は、ポルノ被害者の相談支援を行っているNPO法人などの団体もあるので、ネット検索で探してみるといいでしょう。たとえば画像や動画が海外サーバにアップされた場合、日本国内から投稿されたものか判断がつかず、警察では刑事事件化できないことが多いそうです。こういう場合は、そういった団体に頼るのがいいと思います」
「なるほど……」
「リベンジポルノは、性暴力です。絶対に許してはいけない犯罪です。大ゴトにして画像や動画を拡散したくない気持ちもわかりますが、泣き寝入りしてしまうと、さらなる性行為を要求してきたり、交際を迫ってきたりするケースもあります。泣き寝入りは、絶っっっ対にダメです!」
「わ、わかりました」
「カイトさんが知りたかったのは、こんな情報でいいのかしら?」
「はい、勉強になりました」
「くれぐれも、無茶はしないでね」
「──はい」
そういって、僕は電話を切った。
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