【第32話】復讐するつもりですか?
学校からの帰り道。
僕と三太郎は琴音先生から教わったばかりの知識をお互いに確認しつつ、包茎談義に花を咲かせていた。
「しかしカイト、こんな話を新菜に聞かれたら大変なことになりそうだな」
「そうだね。オチンチンの話は新菜には聞かせられないね」
思わず周囲を確認してしまった。
三太郎のいうとおり、もしも新菜に聞かれたら、一生口をきいてもらえないかもしれない。
男子校なら、きっとこういう話も、遠慮なく学校でできるのだろう。
なんだか男子校や女子校の存在意義が、やっとわかった気がする。
そういう意味では、こうやって、何でもいいたいことを話せる三太郎との時間は貴重だし、とても楽しい。
しかし、楽しい時間はあっというまに過ぎていく。
もう、いつものコンビニに着いてしまった。
「三太郎、また明日ね」
「おう、じゃあな!」
三太郎と別れて角を曲がると、そこには見たくない顔が待っていた。
「今日は部活もないのに、やけに遅かったな。待ちくたびれたぜ」
阿久野晃司──かつて何人もの女子テニス部員たちをもてあそんだ男。
テニスで僕に敗れて、退部に追い込まれた男。
彼が僕に用事があるとしたら……。
それはもちろん仕返し──復讐しかないだろう。
いやな予感しかしないが、いちおう社交辞令だけはいっておこう。
「もう退院されていたんですね。おめでとうございます」
「うるせえ! おまえにはこれから勝負を受けてもらう!」
やっぱりか。
「懲りてないんですか」
「黙れ! あんなマグレで勝ったつもりか! しかも、相手にボールをぶつけるなんて反則だぞ!」
「そうでしたっけ? 確かテニスには、相手の体にボールをぶつけてはいけないというルールはなかったと思いますが」
「う……うるせえ! マナーの問題なんだよ! 今度は正々堂々と勝負しろ!」
「正々堂々と……ですか。わかりました。今すぐですか?」
「今日は部活がないからコートがあいてる。ちょうどいいだろう」
正々堂々と、などといっているが、信用できるわけがない。
テニスコートは校舎から最も離れた、学校の敷地の隅にある。
ちょっとした林に囲まれているので、ボールの打球音や歓声などがコート外にもれないようになっている。
それはつまり、コート内で何が起こっても、外部には気がつかれないということを意味する。
阿久野晃司の目的は復讐なのだ。
どんな汚い手を使ってくるか、わかったもんじゃない。
「断ったら?」
「俺が関係をもった女子部員のエロ画像をSNSにばらまく。ようするに、リベンジポルノってやつだ」
「なっ……!? そんなことをしたら警察に捕まりますよ?」
「そんなドジするかよ。やるのか? やらないのか?」
おそらく違法な手段で入手したアカウントを使うなどして、誰が投稿者したかわからないようにするつもりなのだろう。
だとしても、被害者側から訴えられればアウトのはずだが……はたして彼女たちは訴えるだろうか。
いや、おそらく訴えない。
訴えれば、あられもない姿で写真に写っているのは自分です、と名乗り出るようなものだからだ。
「わかりました。やります」
「フン、聞き分けがいいな。じゃあ、行くぞ」
「僕、今、ラケットを持っていませんが」
「ラケットぐらい貸してやるよ」
「自分のを使わないと、フェアじゃないでしょう」
本来テニスでは、数あるラケットの中から、自分に合う機種・重さを選んで、自分好みのガット(ラケットに張ってある網みたいなやつ)を打ちやすい強さで張って使うものらしい。
しかしながら、僕の場合は三太郎のお母さんから譲り受けたラケットしか使ったことがないから、べつに阿久野のラケットを借りても問題ないのだが、少し時間の
「フェアじゃない……か。まあ、いいだろう。じゃあ30分後、学校のコートに来い」
「わかりました」
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『テニスなんかにゃ興味ない!』を
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この物語は毎日更新していき、
第50話でいったん完結する予定です。
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