【第13話】マスターベーションってどうやるんですか?

1人エッチ、マスターベーション、オナニー。

琴音先生の口から刺激的な言葉が3連コンボで飛び出すと、三太郎は再び股間を押さえた。


「せ……先生、そのかわいい声で、エロい言葉を冷静にいうの、やめてもらえますか。股間が……もちません」


「三太郎さん、マスターベーションは、けっしてエロい言葉などではありません。私がお話ししているのは、あくまでも教育の一環です。思春期の性欲をしずめるための効果的な方法として、マスターベーションが存在します」


「せ……先生、しずまりません! その説明は、むしろ逆効果です!」


三太郎はよけいに興奮してしまったようだ。


「大丈夫です。しっかりと先生の話を聞いて、ご自宅で実践してください。では、具体的にマスターベーションの方法について説明しましょう」


こうなると三太郎の興奮も最高潮だ。


「せ、先生! もしかして俺のアレを使って実際に説明してくれるんですか!?」


「風俗か!」


新菜は再びカバンで三太郎の顔面をぶっ叩いた。


簡単に情報が手に入る今の時代、まだそういう経験がない僕でも、どうやってオナニーをするのかってことぐらいは、だいたい知っている。

さすがに女性がどうやっているのかまでは、よく知らないけれど。


「先生、オナニーの説明は省略していいと思います。たぶん三太郎や新菜は詳しく知ってるだろうし、僕も、ざっくりとは知ってます」


「確かにそうですね。マスターベーションに関しては、まったくしない人もいますし、個人差が大きいことですから、わからないことがあったら、個人的にいつでも聞きに来てください。ただ、性的欲求のコントロールのために、そういう方法があるということは覚えておいたほうがいいでしょう」


三太郎は残念そうな顔をしているが、僕はちょっとホッとした。

新菜はどっちなんだろう……と少し興味があって彼女の表情を見ようとすると、ちょうど新菜が声を上げた。


「先生! オナニーより、セックスの話をもっと教えてください。妊娠のリスクがあるのはわかってますけど……私、やっぱりカイトとエッチしたいんです!」


「だけど新菜さん、カイトさんはまだ精通を迎えていないんですよ。あなたと違って思春期に入っていないんです。まだセックスに興味がない男の子にそういうことを強要するのは、先生は感心しません。カイトさんのことを本当に好きなら、カイトさんの気持ちをもっと考えないといけません」


「う……それは……」


ナイスです、琴音先生。

今のはとてもいい説得だった。


「このことは、カイトさんが思春期に入ったら、また話し合いましょうか」


話をシメにかかる琴音先生。

だが、新菜はそれぐらいでは引き下がらなかった。


「だったらカイトに射精させればいいんでしょ? 先生、今すぐカイトを射精させて思春期に強制突入させる方法はないんですか?」


ムチャクチャだ。

そんな方法、あるわけないだろ。


僕が心の中でツッコミを入れていると、琴音先生はちょっと視線を天井にやって、考える仕草をしてから答えた。


「まったくないわけじゃありません」


あるんかい!


「早く教えてください!」

「俺も知りたい!」


興味津々の新菜と三太郎。

やめてくれ、2人とも。

人を無理やり思春期に突入させないでくれ!


「方法はあるにはありますが、思春期を早めるのは、健康のためによくありません。思春期がくる時期が遅い子ほど、身長も大きくなりやすいというデータがあります。逆に、思春期が早すぎる場合は思春期早発症という病気に該当し、治療が必要です。思春期というのは、始まるのが遅いほうがメリットが大きいので、無理に早めるのはやめましょう」


「えっ、じゃあ俺みたいに思春期が早いと、背が伸びないんですか!?」


みょうにうわずった声をあげたのは三太郎だった。


「必ずしもそうとはいいきれませんが、思春期に入ると、体は身長が伸びるのを抑えようとし始めますから、そういう傾向があるのは否めません。でも、三太郎さんの場合、身長は高いほうですし、栄養をしっかりとって、適度に運動して、それでも背が伸びなくなったら相談してください。さあ、もう日が暮れてきました。今日のお話はこれでおしまいにしましょう」


琴音先生にさようならの挨拶をする。

職員室を出たところで、新菜が僕にささやいた。


「ねえカイト。精通があったらすぐ私に教えてね」


「え……ええっ……?」


そこに割って入ってきたのは三太郎だ。


「ちょっと待て新菜! それを報告するなら、まず俺だろう」


「ハア!? なんであんたなのよ!」


「精通があったかどうかなんてのは、男同士の秘密にしておくべき事案だろうが!」


「あんたバカなの? カイトがセックスできるようになったら、まず最初に知るべきなのは女の子の私に決まってるでしょ!」


「──ストーップ!」僕はたまらず叫んでいた。「そんなプライベートなこと、どっちにも教えないよ! ほら、2人とも教室に帰るよ!」


実は、琴音先生に最初に教える約束をしてしまったのだけれど、このことは内緒にしておこう。


♪∽♪∝♪——————♪∽♪∝♪


『テニスなんかにゃ興味ない!』を

お読みいただいてありがとうございます。


この物語は毎日更新していき、

第50話でいったん完結する予定です。


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