8年も!? 2/2
【じゃあどうやって倒したの?】
【ティナが大きなダメージを負わせてくれていたので、徐々に警護ドローンが追従出来る速度まで動きが落ちたところを警護ドローン二機が抱き着き、振りほどかれる前に大型ドローン一機で警護ドローンごと捕縛。上空に吊り上げてダーナの主砲で殲滅しました】
【は? ダーナって40kmくらい離れてなかった?】
【43.7km離れていました】
【ダーナの主砲って大口径レーザー砲だったよね。空気中を44kmも直進して、魔人を殲滅するだけの威力が有るの?】
【最大出力で撃ちましたから】
【……周り、大丈夫だったの?】
【水平発射になる位置まで吊り上げて撃ちましたから、60kmほどで空中に完全拡散しました】
【…巻き込まれた警護ドローン二機と大型一機は?】
【主砲到達時にインビジブルモードを使用したこともあって、アーム部や外装は溶融しましたが、本体内部は無事でした。すぐに修理出来ましたよ】
【そう、よかった。……で、それほど戦闘が長引いたために、私の脳細胞は壊死が始まっちゃって、治すのに八年もかかったわけね】
【はい。ティナを医療ポットに回収した時点で、脳細胞の壊死がかなり進んでいました。その時点でティナの脳内をフルスキャンし、健康診断時の脳内スキャンデータと比較しつつ、欠落部分の記憶やシナプスを可能な限り再現しました】
【え、それってひょっとして、シナプスの太さまで?】
【はい。そうしなければ、思考に変化が出る可能性もありましたから】
【いや待って。そんな面倒なことするくらいなら、電子脳に私の記憶データインストールした方が早かったんじゃない?】
【その場合は脳がデジタル化してしまうので、以前のティナと同一の発想が出来るとは思えませんでしたから】
【それにしたって八年は長すぎない?】
【…どうしても生身のままのティナとして復活して欲しかったのです】
【…理由を聞いてもいい?】
【困ったことに、はっきりとは理由が分かりません。ですがどうしても、電子脳のティナより生身のティナがいいのです】
【分かんないかぁ…。まあ、アルがそうしたかったのならそれでいいよ。ところで、私の身体って八年でどのくらい成長したの?】
【身長で、7.24mmですね】
【え”、ミリ単位? さ、さすがにそれは少なすぎない?】
【ピコマシンで脳細胞を細かく再生治療する場合、医療ポットでコントロール出来るピコマシンの数には限界があります。従って身体側の生命活動は最低限に抑えた半コールドスリープ状態にし、出来る限り現状を維持しました】
【…身体の方はどんな感じなの?】
【複雑骨折や内臓破裂などひどい状態でした。ですが初期治療で出血部分は処置してありますから、後は治すだけです】
【…そこまでして私を助けてくれて、ありがとう。アルに命を助けられたの、これで二回目だね】
【まだですよ。脳の修復が終わったので、これから各臓器や骨格、筋線維などの修復に入りますから、あと二か月ほどかかる予定です】
【あれ? 今回は滝つぼの時と違って長いね】
【半コールドスリープ状態とはいえ八年ですから、怪我の箇所だけでなく脳以外の身体全体の機能が衰えています。しかも細胞の壊死もかなり進んでいますので、歩けるようになるには、およそ二か月間の治療が必要です】
【そうなると二か月は医療ポットの住人かぁ…。まあ、ほとんど死んでるのに助かったんだから文句言ったら罰が当たるね。二か月もあるなら、八年間のお話いっぱい聞かせてよ】
【了解です。まずティナが知りたいだろうことは、クラウの近況でしょう。クラウは現在二児の母で、三人目を身ごもっていますよ】
【まじっ!? うわ~、早くその子たちに会いたい!】
【瞼すら開けられない人が、何言ってるんですか。医療ポットから出られても一か月は様子を見ますから、本格的に動けるのは早くても三か月後です】
【そ、そんなぁぁぁぁ】
【何がどうなろうと、私が許可するまではダメですからね】
【ふえぇぇぇぇん、何とかしてよぉぉぉぉ】
【ダメです!】
【お願いしますアル様。謎技術全開で何とか!】
【様付け止めなさい。無茶して体調悪化させたら、それこそ罰が当たりますよ】
【うぐっ。……でもでも、そこを何とか!】
【ダメったらダメです。今のティナの状況を見たら、クラウは泣きますよ? 子どもたちなんて、怯えて逃げるかもしれません】
【ぐっ、それはヤダ】
【なら大人しくしてなさい】
【……………はぁい】
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