何それっ!?

到着したダーナは、アオラキから搔き集めて来たドローンを発進させた。

小型ドローンを鉱山内の探索に使い、残り少なかった大型ドローンを森の魔獣討伐に、中型ドローンをそのサポートに付けた。

しかもダーナから森の魔獣に対して高出力のパルスレーザーを発射したため、魔獣の討伐速度が格段に上昇し、事態は急速に好転していった。


町では二機の大型ドローンが漏れてきた魔獣を殲滅し、もう一機が城壁を応急的に補修中。

魔人をティナが受け持ったため一時的に抜けられた魔獣が増えたものの、各町に配備したドローンで殲滅可能な数だろう。


そしてダーナの参戦で森から出て来る魔獣が減ったため、ティナの警護ドローンも魔獣の取りこぼしが減りつつあった。

ティナも魔人を残り二体にまで減らし、やっと全力の超高速戦闘に終わりが見え始めていた。


だが、残った二体の魔人はかなり強かった。

漏れ出る魔素量からすると、内包する魔素は死与虎の四倍近い。

不用意にジャンプしないし反応が早いため、ティナの光の矢でもなかなか仕留められなかった。


そこでティナは、残った二体の戦闘力を徐々に削る策に出た。

光の矢に込める魔素量を何倍にも上げ、至近弾でのダメージ蓄積を狙ったのだ。


魔人たちは太くなった光の矢を完全には避け切れず、少しずつ負傷が増えていく。

若干だがスピードも下がり始め、攻撃力も落ちて来たようにティナは感じていた。


ティナ側も光の矢の魔素消費が跳ね上がったために残りの魔素は心もとないが、何とか戦闘終了までは持ちそうに思えた。

最悪魔素が切れても、ダメージが蓄積してスピードの落ちた魔人なら、警護ドローンや森内の討伐を終えたドローンたちでも仕留められるだろう。


魔人たちのスピードも徐々に落ち、一体の魔人の片足を吹き飛ばすことに成功したティナは、長く続いた全力の戦闘状態に疲れ、つい気を緩めてしまった。


そこに、森からもう一体の魔人が現れた。

一直線にティナを目指して突進してくる新たな魔人。

感じる魔素量は死与虎と同じ程度だし、フェイントも使わずティナに一直線に向かって来る。

他の魔人二体はティナから離れた位置だったこともあって、ティナは向かって来た一体を確実に仕留めようと、太めの光の矢を用意して振りっ帰った。


振り返ると同時に発射された光の矢は、突っ込んでくる魔人に向かって飛んで行く。

避けた側に軌道修正しようと相手を捉えたティナの目には、十歳前後の少年の姿が映った。


半ば無意識に、ティナは光の矢軌道を違う魔人に向けて強引に曲げた。

光の矢がそれほど曲げられるとは思っていなかったその魔人は、避けきれずに右肩付近をごっそり持って行かれた。


ティナは突っ込んできた魔人に対してとっさに魔素で防御壁を展開したため、少年魔人は防御壁に衝突して吹き飛んだ。


だが、そこでティナの後頭部に強い衝撃。

片足を亡くした魔人が腰に差していた手斧を投げたのだが、突っ込んで来た魔人が少年だったことに驚いたティナは、魔素感知が疎かになってしまっていた。

そして、飛来する魔素の少ないただの物体である手斧を感知することが出来なかったのだ。


戦闘状態であったために、ティナは身体強化もしっかりと掛けてはいた。

当然身体の防御力も異様に上がっているのだが、魔素切れ間近なために、攻撃を受ける場所だけに多くの魔素を回して、魔素消費を抑えていた。

結果、死与虎の四倍近い魔素を持つ魔人が全力で投げた斧には気付かず、少ない魔素ではその衝撃に抵抗しきれなかった。


強烈な衝撃と共に急速に失われつつある意識の中で、ティナはアルに通信を送った。


【ごめんアル、後は任せる】

【ティナッ!?】

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