魔人
「ティナ、ルーマナ王国でスタンピード発生。すでに魔の大森に近い町が襲われています」
「なっ!? 救援に行かなきゃ! まずはキャリー君に中型と大型のドローン積んで、アオラキから発進させて。音や痕跡出てもいいから、最大速度で。こっちからも大型と中型を…ああっ! 足が無い!!」
「製造中のキャリー君二号機があります。まだ内装工事途中ですが、飛行は可能です」
「じゃあそれで行こう。クール君で私も出るから、一緒に小型ドローン積んでくよ。詳しい状況はクール君の中で聞くから」
「了解です」
救援のために慌ただしく動き始めたティナは、アルフレートを領主代行としてホーエンツォレルン城に残し、クール君で移動しながらルーマナ王国に映像通信を試みた。
王城にはスタンピードの報告が届いたばかりのようで、城内はかなり混乱していた。
そんなところに突然映像が空中に現れ、見たことも聞いたことも無い妖精王国という国名を名乗る幼女が救援を申し出たのだ。
半ばパニックになるルーマナ王国側の面々を、ティナは緊急事態だからと押し切って、無理やり救助活動を認めさせた。
というか、言い逃げに近い形で妖精王国の救援活動を宣言したのだが。
既に町が襲われていると聞いて、ティナは発見のリスクを抑えるための速度制限を無視しての移動時間短縮を選択した。
ホーエンツォレルンから発進したティナのクール君とキャリー君二号機も、盛大に飛行機雲を引きながら大陸の東に向かっていた。
「ティナ、ルーマナ王国の森内で充電中だったドローンの観測では、魔素濃度の上昇は観測されていません。低軌道の通信中継ドローンによる魔素カメラ映像では、突然山脈の山裾から高濃度の魔素が噴出したように見えます」
「うわ、そんな突発的な高濃度魔素の噴出まであるんだ。魔素の監視方法、もっと考えなきゃダメだね」
「はい、今後の調査結果次第で変えていきましょう。森内の充電中ドローンの魔素カメラの映像では、森奥から流れて来る魔獣が、徐々に増えていますね」
「…念のためにダーナにも大型ドローン積んで発進させて。生産活動が一時的に止まってもいいから」
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