ランダン王国に招待された 4/4
「………あい」
「ティナ嬢、バプールの黒死病は沈静化したとのことだったが、バプールは今後どうするのか聞いても良いか?」
「あそこは住民の規範意識がかなり低くてさぁ。今は政治体制変えて意識改革中だから、バンハイムと規範意識が大差無くなってからひとつの領として吸収するよ」
「そこまでか。長年染み付いた意識を改革するのは、大変そうだな」
「だよねぇ…。今は機械妖精が、警告のしみしみ液撃ちまくってるよ」
「先ほどの侯爵たちに浴びせたあれか。暴徒鎮圧にはもってこいだな」
「あれは唐辛子の汁みたいなものだから、目や鼻に入ると強烈なんだよね」
「…香辛料だったのか。もったいないな」
「あ、唐辛子や胡椒もシュタインベルクで栽培始めたから、そのうち安く手に入るよ」
「砂糖綿花に続き唐辛子や胡椒まで…。まったく恐れ入る」
「シャルト共和国でも輸出用に大々的に栽培を始めましたから、こちらからも融通出来ますよ」
「すごいな。そして次はバンハイムでもか。…早く合併すべきだな」
「今日の料理にも使ったけど、バンハイムの北でコンブ漁始めたの。出汁として優秀だから、さらに料理が美味しくなるよ」
「シャルト共和国では、大豆を収穫して味噌と醤油の醸造も始めました。あと二か月で完成予定です」
「おお、頑張ってるな。後は鰹節か」
「シャルト共和国南の近海で獲れることが確認出来ましたので、カユタヤに漁港と工場を作っています。漁師も手配済みですので、こちらは後一か月で稼働可能です」
「おおう、結構揃って来たね。市販出来るようになったら、一気に家庭でも美味しい料理が食べられるよ」
「え? あの先ほどの料理が家庭でも?」
「そうだよ。そのためにみんなに頑張ってもらってるの」
「ティナ様。私、バンハイム首都に移住します!」
「おい、まだ俺は行くとは言っていないぞ!?」
「殿下、こちらに戻ってからお痩せになっていますよね?」
「それは…忙しかったからだ」
「さっき、ものすごく食べてましたよね?」
「美味いんだから仕方ないだろうが!」
「ティナ様、バンハイム首都なら、いち早くそれらの食材は手に入るんですよね?」
「そうだね。全部揃うのは、シャルト共和国の首都かバンハイムの首都だね。バンハイムの首都には、今日提供した料理をすべて作れる子もいるよ」
「殿下、一刻も早く合併を!」
「おい、お前性格変わってないか?」
「だって、こちらに帰って来てからの食事と言ったら…。お見合いツアーに参加した全員、一目で分かるほど体重減ってるじゃないですか!? アウレール殿下なんて、料理の絵なんか描いちゃってましたよ! 上手すぎて、見たら口の中が唾液だらけになりましたよ!」
「分かった。分かったから落ち着け。これからまだ、やらねばならんことが山ほどあるんだぞ」
「私、王城に泊まり込みます。使い倒してください」
「うわぁ。なんかクリストフさん、薬物中毒患者みたいになってるよ」
「だってティナ様、毎日毎食途中で食べるのを止めてしまうほどの料理ばっかりなんですよ。もう泣きたくなりますよ」
「あちゃぁ…。分かった。アル、キャリー君に積んでる乾燥食料、あるだけ持って来てあげて」
「七百食しかありませんが、いいですか?」
「うん、それでいいよ。クリストフさん、今日の料理には及ばないけど、お湯を掛けたらある程度おいしい料理が出来る物を置いてくから、みんなで分けて食べて」
「え、分けるんですか?」
「おいこら! ちゃんと分けろよ!!」
「……仕方ないですね」
「お前、本当に性格変わってるぞ。俺、お前の主だって分かってるか?」
「たとえ主でも、ティナ様にいただいたのは私です。横取りは許しません」
「本当に性格変わってやがる…」
「クリストフさん、お見合いツアーメンバーみんなにあげるんだから、ひとりじめはダメだよ」
「………追加ってお願い出来ません?」
「まだ食べてもいないでしょ。それにいっぱいあっても痛むから、少なくなったら連絡頂戴」
「分かりました! ありがとうございます!!」
「ハルトムート殿下、そういうことなんで配分よろしく」
「正直助かる」
「いえ。懐柔目的とはいえ、美味しい料理ばっかり出しちゃったこっちにも責任があるので、乾燥食料なら融通します」
「ぶっちゃけてしまうが、ツアーに参加したメンバーたちは大なり小なり妖精王国の食事に飢えている。それほどまでに我が国の食料事情は悪いと言うことなのだ」
「……今日の料理、うちが用意したのはマズったかも。合併すればこんな美味しい料理が食べられるんだよって意味で出したんだけど、食糧事情が悪すぎる場所だと、嫌味に取られないかな?」
「それは無いと思うぞ。合併反対派まで、目の色を変えて料理を食べていたからな」
「そうであって欲しいなぁ」
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