ランダン王国に招待された 3/4
「バンハイムの機嫌を損ねることで軍事行動の可能性を示唆すれば、ルイーゼ嬢の意向はほぼ間違いなく通るな。その上で貴族たちの大半を合併に賛成させるか。未だ成していないことで気を抜くわけにはいかんが、おそらく合併は成るな」
「じゃあその次。ハルトムート殿下、一旦平民になってから合併したバンハイムとランダンの国主に就任しない?」
「………は?」
「何ならクール君も作って貸し出すよ?」
「……今、とんでもないことを言われた気がするのだが?」
「それがさぁ、バプールと山脈南部の国をひとつ吸収することになっちゃってね。うち、人材不足なのよ。ランダンの王子様身分のままだとバンハイム側にいらない軋轢生んじゃうから困るけど、一旦平民になったとしてもランダン国民は合併を受け入れやすくない?」
「……それでもバンハイムの貴族たちは納得しないだろう」
「今バンハイムでは、各代官の後継を集めてルイーゼの部下に付けてるんだけど、今いち大局的な視点の人がいないんだよ。だからハルトムート殿下も最初はルイーゼの部下になって、実力で地位を勝ち取ってもらえば反発も少ないかなって」
「無茶振りがすごいな。実力で他者を圧倒しなければならんのか」
「ハルトムート殿下は王族って言う立場で教育受けて来てるから、視野が広いんだよ。代官の子たちって独断が多くて、部下にやれって命令するばっかりなの。矯正はしてるんだけど、物になるまでかなり時間がかかりそうなんだよね」
「…ティナ嬢の判断では、俺にはその大役が務まりそうなのか?」
「クリストフさんやフリッツさんと一緒なら、充分やっていけると思うよ」
「「私たちまで!?」」
「え、ハルトムート殿下見捨てちゃう気だったの?」
「そんなことはしません!! ですが、それって大国国主の側近に付くって言うことですよね!?」
「何言ってるかな。ハルトムート殿下がランダン王国の国王になったら一緒じゃん」
「いやいやいや、規模が違い過ぎますって!!」
「規模が多少大きいだけで、やることは変わらないよ?」
「「多少って……」」
「まあ、まだ先の話だから、将来の選択肢として一応考えてみて」
「…ルイーゼ嬢はそれで納得しているのだろうか?」
「私は今の仕事を誰かが代わってくれるなら、全く問題ありません。シャルト共和国はこれからも大きくなっていきますから、そちらを手伝いたいのです」
「そうですね。すでに一国が恭順を申し出ていますし、もう一国もそれに近い動きをしています。さらに他の一国は政治情勢が不安定なので、目が離せない状態です。ルイーゼが来てくれたら、私たちはかなり助かりますね」
「あれ? それってシャルト共和国の東側だっけ?」
「はい。隣接するウベニアは旧帝国と裏で組んでいた事実を突き付けて恭順を断りましたので、王族は軍備という名目の重税が課せなくなっています。ウベニア国民はシャルト共和国が侵略性国家では無いと気付き始めていますので、吸収合併を望む声も大きくなってきています。その東の友好国となったザグレシアでは機械妖精が活動しているため、国民は妖精教を信じつつあり、宗教無しでの統治が難しいと感じている国の運営陣がシャルト共和国への吸収合併を話し合っています。セルビは王族と貴族の利権争いがひどくなり、ザグレシアに逃れる国民も出始めています」
「だよねぇ…。ウベニアが転んだら、一気に三国合併もありそう」
「ティナ、海向こうを忘れていませんか? イングラム王国は、シャルト共和国に友好の使節団を派遣しようとしてますよ」
「忘れてない。忘れてないけど、使節団到着するまで考えたくないだけ」
「黒死病の特効薬二万本は、かなりの大盤振る舞いでしたからね」
「…アンネリース、対応任せてもいい?」
「いいですけど、あちらに特効薬を持ち込んだのはティナ様ですよね?」
「やっぱ私が会わないと失礼かぁ…」
「お礼攻撃が苦手なのは分かりますが、あちらの感謝の気持ちなんですから、きちんと受けましょうね」
「……あい」
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