ランダン王国に招待された 2/4
その後ハルトムートに先ほどの一件を動画で見せたところ、意外にもハルトムートはルイーゼの対応が優しいと評した。
一国の国主にあの侯爵のような態度を執れば、その場で首を撥ねられてもおかしくはないと言うのだ。
たとえばルイーゼが相手を馬鹿にする気であの発言をしたとしても、全く問題が無いのがランダン王国での共通認識だと。
ティナは誤解を生むルイーゼの言動を気にしていたが、封建社会では下位の者が上位の者の言動を誤解する方が悪いらしい。
しかもあの侯爵は合併反対派の筆頭らしく、ランダン王国の法に照らせば先ほどの行為は死罪が当然なので、合併が推進しやすくなると感謝までされてしまった。
それを聞いたルイーゼは、さすがに可哀想だと助命を申し出た。
ここでティナが一計を案じ、ハルトムートと密談を始めた。
他国の国主を招待したランダン国王の顔に泥を塗る行為だとして国王が死刑を言い渡そうとするも、ハルトムートがバンハイム共和国側が助命を求めていると擁護し、妖精王国側に譲歩すべきと提案する。
被害者自身が加害者の助命を望んでいるのであれば、その意向に沿った方がいくばくかでも謝罪になるはずだから。
本来他国の国主を招待した場で国主が襲われれば、未遂であっても多額の賠償金を支払うのは必定だ。
もし賠償金ではなく領地の割譲などを求められたら、下手をするとせっかく手に入れた穀倉地帯を取られかねない。
だが被害者の意向に沿うことで賠償金が減額されるなら、ランダン王国としてはありがたいし、意向に沿うことを盾に穀倉地帯の割譲にもある程度抵抗出来る。
もうひとつハルトムートにとって行幸だったのは、侯爵の周りにいたのが合併反対派の諸侯だったことだ。
最初に手を出した男は侯爵の従者ではなく、合併反対派の子爵だった。
次に手を出したのはやはり合併反対派筆頭の侯爵で、周りにいた合併反対派は、子爵と侯爵の行動を止めようともしなかった。
このような国家の危機を招いたのは招待客を軽んじた合併反対派の愚動によるものなので、加害者である侯爵と子爵だけでなく、合併反対派が責を負うべきではないかと糾弾するのだ。
合併反対派の筆頭である侯爵と、子飼いの子爵は没落確定。
この状態で合併反対派が責められると、言い訳すら難しい。
合併反対派は自身の責を逃れようと日和り、瓦解する可能性さえあった。
「ティナ様、相変わらずの作戦立案能力ですね。私は反対派の勢力を削ぐ程度にしか考えられなかったのに、穀倉地帯を取られる可能性を示唆して反対派だけでなく中立派にまで危機感を植え付けますか」
「お、クリストフさん偉い! よくそこに気付いたね。実はそっちが本命なんだ。今やランダン王国西部の穀倉地帯は、王国にとっての生命線。今回の事が無くても、バンハイムが機械妖精と共に軍事行動に出たらあっけなく奪取されちゃう。実際にはそんなことしないけど、あの場所はバンハイム方面に対して開けてる上にランダンの王都から遠いから、前線が広がって守るにとんでもない兵力を常駐しなきゃいけない。だけどバンハイムと合併したら、そんな軍事費は皆無なだけじゃなく、あそこで不作になってもバンハイム中の穀物が当てに出来る。そこに気付いて欲しいんだ」
「すいません、生意気言いました。そんなとこまで読めませんよ!」
「あれ? でも中立派への圧力掛けるなら、そういうことだよね?」
「ティナ嬢、残念だがまだ我々には一瞬でそこにまでたどり着く能力は無いから、少しは加減してくれ。つまり俺は、中立派にそのことを気付かせればいいんだな」
「加減って…。でも方針はその方が楽でしょ?」
「あの穀倉地帯を機械妖精から守るだげの軍事費負担…。おそらく中立派の大多数が合併賛成に回るだろう」
「その時に反対派に譲歩させるチャンスを与えれば、結構賛成に回ってくれる気がするよ」
「バンハイムの機嫌を損ねることで軍事行動の可能性を示唆すれば、ルイーゼ嬢の意向はほぼ間違いなく通るな。その上で貴族たちの大半を合併に賛成させるか。未だ成していないことで気を抜くわけにはいかんが、おそらく合併は成るな」
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