新首都稼働
「ティナ、バンハイムの首都機能、新首都への移転が完了しました」
「お、なんかトラブルあった?」
「細々としたものはありましたが、概ね順調に進みました。現在は新首都に集まった監査官が、各領の代官と映像でやり取りしています」
「監査官の後継人材って、各領二人は確保出来た?」
「人数的には確保出来ていますが、能力のばらつきが大きいですね。補助人員に学舎卒業生も二人付けていますが、その卒業生に劣る者もいます」
「あー、それって代官の息子とか?」
「そうです」
「…地元にいるうちに監査官から教育受けてたはずだよね?」
「進捗は、人それぞれですから」
「…定期的に各領の報告会とかして、危機感持たせるか。そうだ、新人デミちゃんも送り込んで、行政や統治を体験してもらおう」
「了解です。あと、各領から連れて来た世話係や料理人ですが、こちらも代官の親族は甘えや選民意識が目立ちますね」
「…アメリアってシュタインベルクから戻って何してたっけ?」
「ここの厨房で新料理の開発をしてますが、あらかた食材を試し尽くしたようで暇そうですよ」
「新首都で世話係と料理人の指導してくれないか、聞いてみて」
「…確認しました。喜んで行くそうです」
「じゃあお任せしよう。バプールの方はどんな感じ?」
「新規感染者が出なくなって、現在六日目です」
「…残ってる医療チームに新人デミちゃんの応援出して、統治もさせられないかな?」
「当初からやってますよ。行政権が無いと、検疫や都市封鎖なんて出来ませんから」
「おぅ、指示忘れてた。助かったよ」
「残っているデミ・ヒューマンたちの内諾は得ていますから、このまま統治してもらいましょう」
「応援出さなくて大丈夫?」
「六人ほど新人デミ・ヒューマンを出しましょう。住民の規範意識がかなり低いので、意識改革に時間がかかりそうです」
「もうちょっとましにならないと、バンハイムに吸収出来ないか。デミちゃんたちへの負担が大きくならないように、支援は厚めでお願い」
「了解です。続いてはサウエチアですが、国名をザグレシアと改名して共和制に移行した上で、シャルト共和国の友好国になりました」
「おお、動き速いな。ウベニアはなんか動きある?」
「ザグレシア共和国がシャルト共和国との友好を発表しましたから、かなり焦っているようです。シャルト共和国への吸収合併ではなく、臣従しようと条件を話し合ってますね」
「もし来たら、帝国とつるんで国民騙して重税課してた者は相手にしないって突っぱねちゃって」
「積極的に何かしないんですか?」
「今はバンハイムの新首都稼働、カユタヤの吸収、バプールの意識改革と統治で余裕が無いし、イングラム王国の黒死病対応も先行き不透明。それに、ランダン王国の合併も後に控えてるだろうからね」
「この大陸全体の統治を視野に入れるなら、やはりデミ・ヒューマンをもっと増やしましょう」
「……名前がね、そろそろ覚えきれないの」
「またそういう無茶を。今やデミ・ヒューマンたちは、妖精王国存続に無くてはならない存在なんですよ? これからもデミ・ヒューマンは増やしていきますから、そんな努力は止めてください。それに、最近デミヒューマンたちの間ではプチ整形する者や、対応年数を過ぎてボディを更新する場合の外見を指定する者も出て来ています。顔と名前が一致しなくなりますよ?」
「マジで!?」
「ボディの対応年数は二十年ですし、それ以前にも大きな損傷を受けた場合はボディを交換します。ティナの努力は、はっきり言って無駄になります」
「そんなぁ…」
「名前は視覚にレイヤー表示しますから、それで我慢してください」
「…分かった。でも、容姿の好みまで出て来てくれたのはうれしいかも」
「…ひとつ困ったことがあります。禁止しているんですが、ティナの容姿を真似ようとする者が多すぎます」
「え゛……。それって、将来見た目は私がいっぱい増えちゃうってこと?」
「そうならないように禁止しています。ですが髪や瞳、肌の色までは禁止していませんから、遠い将来はティナっぽい一族になりそうです」
「……同じボディだと、五つ子六つ子レベルじゃなくなっちゃう」
「同一遺伝子は、旧ボディからの引継ぎ以外禁止です。まあ、二卵性双生児レベルに似る者は出て来るかもしれま……変なイメージ送らないでください。何ですかこの三等身猫耳メイド軍団の行進アニメーションは?」
「いや、私がいっぱいいるの想像したら、なんとなくこうなっちゃった。新型ドローンとかにどう?」
「作りませんからね」
「可愛くない?」
「可愛くても作りません」
「…ダメ?」
「ダメです」
「…」
「…」
「………ダメか」
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