黒死病が飛び火した

「ティナ、黒死病の追跡調査で、イングラム王国の港町でも黒死病の感染が確認されました」

「バプール、イングラムとも交易してたのか」

「それが、イングラム王国とは、公式には交易していませんでした」

「非公式の民間交易?」

「奴隷の密輸です。地下に捕まっていた女性たちの売り先ですね」

「うげっ。…買い手は?」

「直接の買い手は民間の商会でしたが、バックを辿ったところ、イングラム王国の王弟に辿り着きました」

「そいつ、碌なことしてないな。黒死病がイングラムにまで広がってるってことは、割と頻繁に取引があったんだよね?」

「まだ頻度までは確定出来ていませんが、直近で三回の取引があったことは確認しました」

「そんなに女性を流してるってことは、王弟が自派閥の貴族とかに売ってるってこと?」

「そのようです。ですがまだ、過去に売られた女性の追跡までは出来ていません」

「クール君で、小型ドローンと医療ポットをイングラムに派遣して」

「ドローンとポット以外にも、小型魔素発電機二台もすでに派遣済みです」

「おぉ、さすがアル」

「当然です。それで、どのような方針で行きますか?」

「その屑王弟は派閥ごと潰したいけど、他国だったころのバプール女性誘拐とかじゃ妖精王国の介入根拠がなぁ…。黒死病を持ち込んだ責任追及するにしても、表立って妖精王国が動くわけにいかないよねぇ…」

「介入根拠、ありますよ。バプールの闇商人の手先が、バンハイムの村娘と結婚すると騙して連れ去っています」

「結婚詐欺で人身売買か!! バプール、どこまで腐ってんの!?」

「手先の記憶を読んで判明しましたが、すでにその女性たちはイングラムに送られています」

「………バンハイムの宗主国としてイングラム王国に抗議。バンハイム女性の返還と国としての謝罪を要求。その女性たちの足取りを追えたところまで明かして、出来れば王弟の違法な人身売買の被害者だって示したい。ついでに出航先のバプールで黒死病が蔓延していたことを明かし、特効薬の存在匂わせて」

「イングラム王国と妖精王国には国交がありませんが、使者をすぐに受け入れますかね? 急いで対処しないと、黒死病蔓延の危険性があります」

「…イングラム王国にはアンドレさんたち帰り着いてるよね。他国に騎士団派遣出来る家なんだから、結構な旧家のはず。アンドレさんに連絡取って、事情話して主家に王家への仲介頼もう。国王派と王弟派で権力争いしてるって言ってたから、国宝派に特効薬共有すれば、違法奴隷売買の国際問題と黒死病引き込んだ罪で、王弟派潰せるかも」

「了解です。アンドレのいる領に、イングラム王国に派遣しているクール君二号機で、ドローンを送ります」

「うん、お願い。通信出来るようになったらテオドールも同席してもらって、一緒にアンドレさんを説得しよう。テオドールはアンドレさんたちの武術の師匠みたいになってたから」

「そちらも了解です」

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