カユタヤに抗議映像流してみた
シュタインベルク組を領都に送り届け、ティナはホーエンツォレルン城の執務室でカユタヤの反応を見ていた。
「あ~あ、やっぱり暴動起きそうな雰囲気だよねぇ…。よし、妖精王国からも動画配信するか」
「どんな内容で?」
「お願い動画にしよう。妖精は頑張って星の影響病からみんなを助けたのに、やってもいない星の影響病流行の犯人にされたのは悲しい。そのことでシャルト共和国が怒ってくれたのはうれしいけど、戦争になったらせっかく助けた人が死んじゃうかもしれないから、シャルト共和国にはなるべく戦争しないように頼んだ。今回悪いのは自分たちの失敗で星の影響病が広まるのを防げなかった責任を私たち妖精に擦り付けようとした人たちであって、城で真面目に働いてる人たちじゃない。だからその人たちにも死んだり怪我したりして欲しくない。カユタヤで助けた人たちが私たちのために怒ってくれるのはうれしいけど、その人たちが罪を擦り付けようとした人たち以外を傷付けるのは見たくない。私たちは悪いことした人には額にバッテン刻むけど、今回のひどいこと考えた人たちにはバッテンを額に三つ刻む。だから私たちのために怒ってくれた人たちは、怒りを向ける対象を間違えないで。こんな感じかな」
「首謀者や賛同者は特定済みなので×マークを三つ刻むのは可能ですが、その内容だと話者が妖精になります。ティナの妖精イメージを使いますか?」
「いや、あれは私専用の妖精だから、今回は小型ドローンをデフォルメしたアニメーション使おう」
「分かりました。デフォルメのイメージをお願いします」
「そうだなぁ…こんな感じで」
「…ずいぶんとデフォルメしましたね。漫画符号付きですか」
「なるべく可愛くして、視聴者の怒気を抜こうと思って」
「了解」
「あと質問。今回欺瞞情報の発表があるまで気付けなかったのはどうして?」
「城では妖精の監視の目があると警戒して、登城前の馬車内で話し合っていたようです」
「またそのパターンか。…悪人のために小型ドローンの配備数増やすのも馬鹿らしいから、監視体制はそのままでいいか」
「充電塔がありませんから、ワイヤレス給電のスパイカメラまで使うと、ソーラー充電のみではドローンの監視ローテーションが追い付かなくなりますからね」
「うん、現行のままでいいや」
その後カユタヤで即座に流された動画で、暴動の気運は急速に収まっていった。
代わりに王城の出入り口や議員の邸宅周辺では通行人の額を見ようとする者が増え、疑われたくない住民たちは、額を出す髪型にチェンジした。
そのせいで額を出す髪型がカユタヤで流行るのは、もう少しだけ先の話。
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