お見合いツアー 説得資料作り
ホーエンツォレルン城で、国元の国家運営陣を説得する資料を作りたい。
一刻でも早く妖精王国の傘下に入らないと、やがて自国は過去に置き去りになりかねない。
鬼気迫る勢いでこう主張されては、危機感を持たせようとしてやり過ぎた気がするティナは、資料作成の場を提供するしかない。
幸いなことにお見合いツアーは成功しているため、ランダン王国一行は派遣された目的を果たしている。
予定されたお見合いツアーの日程では、まだ一日余裕がある。
ならば空いた時間で、ランダン王国重鎮が妖精王国の傘下に入りたいと思うような資料を作ることは、充分に可能だ。
ホーエンツォレルン城に戻ったランダン王国組は、昼食もそこそこに資料作成を始めた。
最初の内は資料をまとめたり見せる写真や映像の順番を話し合っていたのだが、時間が経つにつれて焦りが出始めていた。
本当に自分たちが作った資料で、頭の固い国元の重鎮たちを説得出来るのだろうか?
もし失敗すれば、自国にとって多大なマイナスになってしまう。
一度首をもたげた不安は焦りを呼び、説明の段取りがまとまらなくなってきた。
しばらく思い悩んでいたランダン王国組は、何とティナを講師として迎える判断をした。
ここ数日で、ティナは自分たちよりはるかに能力が高いと思い知っている。
自国存亡の危機ともいえる今、王太子やその側近としてのプライドなどかなぐり捨てて、適任者を頼ろうとしたのだ。
相談を受けたティナは、危機感を持たせるという効きすぎた薬の投与者として、責任を取って資料作りのチームリーダーとなった。
各重鎮たちの性格や好き嫌いを聞き、見せる資料を決めて行く。
そして資料を見せた後の反応を複数予測し、反論された場合の提示資料も作成。
秘密厳守の誓約書を書いた上で現在のランダン王国の詳しい内情を聞き、妖精王国の力を使っての問題解決策提示。
ティナはチームリーダーでありながら意見や提案を出すにとどめ、基本的にはランダン王国組による資料作成を進めて行った。
そして最後は、ティナ対説得組の想定問答。
融和反対役のティナがかなり厳しい反論をするため、さらにそれに対する反証資料も作った。
気付けば夕食時間となっていたが、サンドイッチを摘まみながら想定問答は続いた。
そして夜遅く、皆が納得出来る説得用資料が完成した。
資料完成のここちよい疲れに浸りながら夜食を食べ、おねむのティナはふわふわと飛びながら自室に戻っていった。
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