バプールへの対処

「ティナ。視察ツアー、お疲れさまでした」

「ほとんどクール君の移動だから、疲れてないけどね」

「目的は達成出来そうですか?」

「結構感触はいいね。後半は、大きな視点に立った質問多かったから」

「いい傾向ですね。さて、色々と報告いいいですか?」

「うん、黒死病関係、気になってたんだよ」

「黒死病対応はほぼ想定通りなのですが、バプール内で地下牢に閉じ込められた女性たちを発見しまし」

「あ? ひょっとして、若い女性?」

「はい。保護した女性の話では、バプール内の貧困家庭から売られたそうです」

「…思った以上に酷い内情みたいね。まだ港は完全閉鎖だよね?」

「はい、他港に感染を広めるわけにはいきませんからね。そのせいで留め置かれてた女性たちの食料を買い漁っていたため、追跡したら民家で地下牢を発見しました」

「主犯は捕まえた?」

「商業ギルドの役員のひとりでしたので、すでに拘束してあった者の中にいました」

「ギルドの役員って…。モラルも何もあったもんじゃないな。保護した女性たちは、黒死病騒ぎが収まったら移住だね。主犯や監禁実行犯は…これも黒死病収まったら処分決めるから、女性たちが入れられてた牢にぶち込んどいて」

「了解。さらにバプールでは、刻み大麻が堂々と店頭で売られてました」

「うへぇ。……なんか嫌な予感して来たな。そのまま領として吸収しちゃうと、犯罪者集団抱えそう。黒死病終息後も、隔離して中毒者と犯罪者洗い出した方がいいかも」

「そうします。特効薬投与時も、何人か意味不明の発言をしたり暴れたりする者がいて、薬物検査したら中毒が判明しました。出どころを探ったら、たばこ店で堂々と売られてて驚きましたよ」

「なんか面倒なの抱えちゃったな。いっそのこと、シュタインベルク西の魔の森を切り開いて、新しい港作るかな」

「あそこも龍脈が切れている個所がありましたね。少しアクセス道路を蛇行させれば、魔獣の心配もほとんど無いでしょう」

「バプールの状況次第で考えよう」

「了解です。続いてカユタヤですが、シャルト共和国のデミ・ヒューマン暗殺依頼を出した者が特定できました」

「やっぱり罷免された外交部の奴?」

「はい、正しくは奴らでした」

「え、共謀して依頼出してたの?」

「いいえ、二人が別々に依頼を出していました」

「依頼料二重取りされてんじゃん! 物証は出た?」

「仲介者が片方の依頼料を着服してましたね。暗殺組織のメンバーは確保済みですが、決定的な物証はありませんでした。仲介者の記憶情報では、結構な数の暗殺や誘拐を仲介してましたね。過去の依頼者の中には、現役議員もいます」

「港って、犯罪者の住処なの? どうするかなぁ…」

「デミ・ヒューマンの多くをバプールに廻していますから、占領しても統治整備が厳しいですね」

「……よし、正攻法で行こう。シャルト共和国から実行犯護送。デミちゃんの使者付けて、実行犯、カユタヤの暗殺組織、仲介者と一緒に引き渡し。記憶映像見せてカユタヤの治安維持に文句付けて、謝罪金代わりに船乗りごっそりいただこう」

「シャルト共和国の新港開港準備ですね。新港は一か月以内に完成しますが、住民がいませんよ?」

「早いな! 森の伐採どうしたの?」

「対物理障壁を発生させたダーナで、押しつぶしながら移動しました。資源探査時代、平地が無い場合にたまにやってましたから」

「なんつうダイナミックな手法…。住民はシャルト共和国内で移住者募集しよう。移住特権に住宅プレゼント。商人にはお店もあげちゃう」

「例の解放した奴隷移住者の中にも、十数名操船技術を持つ者がいましたね。声を掛けますか?」

「せっかく移住して新生活始めたばっかりだからなぁ…。操船技術を生かしたいっていう希望者だけ再移住で」

「了解です」

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